| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-145  (Poster presentation)

雪上足跡調査にもとづくニホンリスの冬季における生息地選択
Winter habitat selection of Japanese squirrels based on snow track survey

*斎藤昌幸, 本田鈴香, 渡部凌我, 渡邉和真(山形大学農学部)
*Masayuki U SAITO, Suzuka HONDA, Ryoga WATABE, Kazuma WATANABE(Yamagata Univ.)

冬季における生息地選択を明らかにすることは、哺乳類の越冬生態を理解するうえで重要である。本研究では、冷温帯の森林域において、雪上足跡調査によってニホンリスの冬季の生息地選択を明らかにした。調査は山形県庄内地方で2020年1月から3月にかけて実施した。林道上や林内の雪上を踏査し、発見したニホンリスの足跡の位置情報を記録した。ニホンリスの足跡の在不在を環境要因で説明する一般化線形混合モデルを構築した。足跡の不在情報は、踏査ルート上に100 mごとに点を発生させることで作成した。環境要因には、GISによって作成した半径1000 m内の広葉樹林率、半径1000 m内のヒノキ科樹林率、半径1000 m内のマツ科樹林率、広葉樹林からの距離、ヒノキ科樹林からの距離、マツ科樹林からの距離、河川からの距離、標高、Topographic position index(TPI)を使用した。ランダム効果には調査ルートを使用した。AICにもとづくモデル選択をおこない、最適モデルを決定した。調査の結果、37本のルート(総距離71.5 km)から156地点でニホンリスの足跡を発見した。モデル選択の結果、ヒノキ科樹林からの距離のみを含むモデルが最適モデルとして選択された。最適モデルから、ニホンリスの足跡は、ヒノキ科樹林に近い場所で出現しやすいと推定された。この結果から、本調査地域ではヒノキ科樹林が冬季のニホンリスにとって重要な生息地であることが示唆された。本調査地域のヒノキ科樹林はほとんどがスギなどで構成された人工林であり、このような人工林はニホンリスの冬季の生息地として機能していると考えられる。


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