| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-167  (Poster presentation)

外海開放性砂浜域鹿島灘〜九十九里の沿岸域堆積物に含まれる易分解性有機物
Bio-available organic matter in subtidal sediments along ocean-exposed beaches, The Kashimanada and Kujukuri coasts.

*宇田川徹(水産技術研究所)
*Toru UDAGAWA(Natl. Inst. Fish. Tech.)

 外海開放性砂浜域の鹿島灘〜九十九里沿岸は底棲魚介類の好漁場である.大型の甲殻類や魚類の餌料となるマクロベントス(小型甲殻類や多毛類など)は懸濁物食・堆積物食が多い.堆積物中の有機物は水産資源に連なる食物網の基盤と考えられ,易分解性有機物はその餌料価値をより直接的に反映する考えられる.
 2017年・2018年の7月上旬・9月中旬および2019年の7月上旬・8月下旬に,水産工学研究所調査船たか丸を使用し,鹿島灘〜九十九里海域海底の水深10 m帯と水深30 m帯との堆積物を採取した.堆積物中の易分解性タンパク質量はBradford法を用いてタンパク質分解酵素添加と未添加との差から,全有機物量は強熱減量で,微細藻類量はクロロフィルa量(蛍光光度計)で,それぞれ測定した.鹿島灘水深10 m帯・鹿島灘水深30 m帯・九十九里水深10 m帯・九十九里水深30 m帯の順に,平均値を以下に示す.
易分解性タンパク質量(µg/g ):2017年 17.8,46.2,93.4,56.2.2018年 34.2,33.7,115.1,57.1.2019年 11.7,16.6,73.3,43.6
強熱減量(%):2017年 1.4,1.3,2.1,2.0.2018 年1.3,1.3,2.1,1.8.2019年 1.4,1.3,1.8,1.9
クロロフィルa量(µg/100 cm2):2017年 52.7,165.7,88.8,140.0.2018年 111.5,223.7,113.2,136.9.2019年 54.5,120.5,112.5,166.7
 易分解性タンパク質は,九十九里で,特に九十九里の水深10 m帯に多く,この海域の水深30 m帯の1.7〜2倍,鹿島灘の水深10 m帯の3〜6倍であった.微細藻類量は両海域とも水深30 m帯で水深10 m帯より多く,易分解性タンパク質の挙動と一致しなかった.


日本生態学会