| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-190  (Poster presentation)

iSeqを用いた環境DNA分析:ライブラリ調整からシーケンスまで
Environmental DNA analysis using iSeq: from library preparation to sequencing

*古川沙央里(龍谷大, クロックミクス), 潮雅之(京大・白眉), 永野惇(龍谷大)
*Saori FURUKAWA(Ryukoku Univ., Clockmics), Masayuki USHIO(Kyoto Univ.), Atsushi NAGANO(Ryukoku Univ.)

環境DNAとは、広義には「水や土壌などの環境試料に含まれるDNAの総体」であり、そこには粘膜や排泄物などを由来とする(微生物ではない視認可能な)マクロ生物由来のDNAも多く含まれている。このような環境試料から抽出したDNAに対して、特定の分類群をターゲットとしたプライマーを用いてDNAを増幅し網羅的にシーケンスすることで、ある調査地において興味ある生物種の在・不在を調べることが可能である。

マクロ生物を対象とした環境DNA分析は、調査対象種の直接捕獲や調査地の撹乱を伴わず、また、従来の目視観察などの生物モニタリング手法と比較して現場調査にかける時間や労力が小さい。そのため、外来種や希少種および絶滅危惧種の検出ツールとして利用が急速に拡大しており、従来型のモニタリング手法の代替もしくは補完ツールとして期待されている。しかしながら、DNA抽出後、シーケンスを行うまでの準備(DNAライブラリの調整)や配列データが得られた後のデータ解析には専門的な知識が必要であり、場合によっては金銭的・時間的コストが大きい。それらのコストが環境DNA分析を保全や生物モニタリングの現場への導入する際にしばしば高いハードルとなっており、これらを縮小することは環境DNA分析の課題の一つである。近年、魚類の環境DNA分析では、ベンチトップ型次世代シーケンサーiSeqの導入が進んでいる。iSeqは他のシーケンサーと比べて低価格で配列解読に要する時間が短く、かつ操作・保守管理が簡便なため、環境DNA分析の迅速化・低コスト化への貢献が期待される。

最近、我々はiSeqを用いた環境DNA分析のためにプロトコルを改良し、マクロ生物だけでなく様々な分類群の環境DNA分析を行っている。本発表では、抽出DNAを元にしたライブラリ調製から次世代シーケンサーiSeqによるシーケンス・解析までの一連の流れ、および解析可能な生物分類群などを紹介する。


日本生態学会