| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-194  (Poster presentation)

マレーシア熱帯地域における景観レベルでの生態系サービスのトレードオフ 【B】
Ecosystem service trade-offs at a landscape level in Malaysia 【B】

*竹内やよい(国立環境研究所), Bibian DIWAY(Forest Department Sarawak)
*Yayoi TAKEUCHI(NIES), Bibian DIWAY(Forest Department Sarawak)

生物多様性及び生態系サービスをWin-Winで管理することは、地域及び全球レベルにおいて必要かつ困難な課題である。特に開発の進む熱帯地域において、生物多様性と生態系サービスの空間的相互作用とそれを決める要因についての理解は急務である。そこで本研究では、熱帯の地域レベルにおける1)生物多様性・炭素蓄積のホットスポットの特定、2)生物多様性・炭素蓄積と土地利用による供給サービスの経済的価値とトレードオフ及びシナジー関係について明らかにすることを目的とした。
対象地域は、森林減少が進みつつも、局所レベルで多様な対応を示す地域であるマレーシア・サラワク州ビンツル省とした。この地域の主要な生態系サービスおよび土地利用である、生物多様性、炭素貯蔵、林業、オイルパームプランテーション、保護区、農村をGIS解析によって分類・マッピングした。生物多様性は、サラワク州に生息する絶滅危惧種哺乳類の種数、生態系サービスについては調整サービス(炭素貯蔵)として地上部バイオマス量を用いた。まず、生物多様性・バイオマスのホットスポットを特定し、さらにこれらのホットスポット間にトレードオフがある地域、シナジーがある地域のマッピングを行った。さらに、種数・バイオマス量と土地利用別の供給・生息地・調整・文化サービスの経済的価値との関連性の解析を行った。
結果として、種数・バイオマス量は供給サービスとトレードオフ関係があるものの、生息地・調整・文化サービスを考慮した総合的な生態系サービスとはシナジー関係がみられた。このことは、生物多様性・炭素蓄積の保全のためには生態系サービスの包括的価値を考慮することの必要性を示している。


日本生態学会