| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-234  (Poster presentation)

環境DNAを用いたメダカにおける遺伝的撹乱の検出
Detection of genetic introgression on wild medaka using the environmental DNA

*中尾遼平(山口大院・創成), 北川忠生(近畿大院・農), 源利文(神戸大院・発達)
*Ryohei NAKAO(Yamaguchi Univ.), Tadao KITAGAWA(Kindai Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

ダツ目の淡水魚類であるメダカ種群Oryzias latipes species complexでは、近年、人為的な移入によって集団間の遺伝子構成を改変される遺伝的撹乱が、全国各地で確認されている。本種群の遺伝的多様性を保全するには、集団内の遺伝的撹乱の有無を判別し、どの集団でどの程度遺伝的撹乱が生じているか判別しなければならない。しかし、従来の手法では体組織のDNAを用いる侵襲的であり、絶滅危惧種であるメダカ種群にとってより非侵襲的かつ迅速な外来遺伝子の検出手法の開発が求められる。そこで本研究では、メダカ種群において遺伝的撹乱の主要因となっているヒメダカの体色遺伝子を対象として、環境DNA分析を用いた遺伝的撹乱の検出手法の開発を目的とした。本研究では核DNAにおいて対立遺伝子となっている野生メダカの体色遺伝子(野生型)とヒメダカの体色遺伝子(ヒメダカ型)を対象として、それぞれの種特異的な検出系を作成し、水槽実験および野外調査で検出系の検討を行った。水槽実験では、各水槽の対立遺伝子頻度と環境DNA濃度比(野生型:ヒメダカ型)が概ね相関を示した。そのため、野生メダカの飼育水を用いて核DNAの環境DNA分析を行うことで、飼育集団中の外来遺伝子の侵入の有無や対立遺伝子頻度を推定できることが示唆された。一方で、野外調査でもそれぞれの遺伝子型が環境水から検出されたが非常に低い濃度であり、同時に環境DNA分析を行ったミトコンドリアDNAの100分の1程度であった。これは、対象とした遺伝子領域がシングルコピーの遺伝子であることが原因であると考えられる。野外の環境水から定量に十分な濃度の核環境DNAを得るには、濾過量を増加させる等の工夫が必要になる。


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