| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-246  (Poster presentation)

棚田跡地の半自然草地は草原性植物の生育地となるか?-静岡県の茶草場における事例
Could a semi-natural grassland on a former terraced paddy act as an alternative habitat for grassland plants? A case study of Chagusaba, Shizuoka.

*丹野夕輝(静岡大学, (株)エコリス), 山下雅幸(静岡大学), 澤田均(静岡大学)
*Yuki TANNO(Shizuoka Univ., Ecoris Inc.), Masayuki YAMASHITA(Shizuoka Univ.), Hitoshi SAWADA(Shizuoka Univ.)

静岡県中西部の茶草場(茶園の敷草を刈るための半自然草地)は希少種を含む多くの草原生植物の生育地となっていたが、歴史の長い茶草場は大きく減少している。一方で、棚田が茶草場に転用され、新しい茶草場が形成ており、草原生植物の代替生育地と期待される。しかし、棚田跡地の茶草場に、草原がどの程度再生しているか明らかではない。本研究では、棚田跡地の茶草場における再生の度合いと、草原植生の再生を制限する要因について推定した。 静岡県菊川市および島田市の茶草場15カ所で、2012年7月から2013年6月に調査を行った。各茶草場にコドラート(2.25 m2)を2~12個ずつ設置し、コドラート内に出現した植物、開空率および土壌条件を記録した。種組成を要約するため、NMDSを使用した。環境条件が植生の再生にどの程度影響しているかを推定するため、同時分布推定モデル(Joint Species Distribution Model)を使用した。 棚田跡地の茶草場は、歴史の長い茶草場と比較して開空率および土壌含水率が高かった。NMDSの結果、棚田跡地の茶草場の種組成は概して歴史の長い茶草場と異なることが示された。Joint Species Distribution Modelを使用した解析の結果、種組成の違いは部分的に環境条件の違いに起因するが、環境条件の違いだけで説明できない部分も残ることが示された。種子の移入の制限や茶草場に転用してからの年数などを検討する必要がある。


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