| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-247  (Poster presentation)

西日本の海岸林にみられる木本20種の耐塩性評価
Evaluation of salinity tolerance of 20 tree species found in coastal forests in the Western Japan

*大谷達也(森林総研四国支所)
*Tatsuya OTANI(FFPRI Shikoku)

将来に発生が予測されている津波災害や近年に頻発する大型台風を受けて、Eco-DRRといった概念が広まり樹木を利用した減災施設としての海岸林が見直されている。海岸林はこれまでクロマツを主体として整備されてきたが、管理の手間があまりかからない広葉樹主体の海岸林造成も一案である。しかしながら、広葉樹の耐塩性について評価した事例はいくつかあるものの、西日本の海岸林で利用可能な樹種については知見が少ない。そこで西日本の海岸林でよく見られる樹種を使って海水浸漬試験をおこない、耐塩性の種間差について検討した。クロマツ、アカマツに18種の広葉樹を加えて全20種のポット苗を10本ずつ用意し、各3本を無処理、残り各7本のポット部分を15時間海水に浸した(2020年9月末)。その後、ポットごとに50mlずつの散水を毎日おこない、葉の変色や落葉の様子を観察した。また、各苗から健全な成葉を3枚ずつ選択して、最初は毎日、後に間隔を空けながら53日間にわたり15回Fv/Fm値を測定した。あわせて散水時にポットの底から滴る水を採取し、電気伝導度(EC)を測定した。その結果、海水浸漬直後には26.0mS/cmであったポット底浸出水のECは急速に減少し11日目には6.0mS/cmになったものの、最終的に1.0mS/cmまでしか下がらず、浸漬前の測定値0.2mS/cmと同等にはならなかった。Fv/Fm値の挙動、落葉、および枯死には種間差が明瞭に認められ、以下の5つのグループに分けることができた。1.変化がない(クロマツ)、2.部分的な脱葉があるが個体の枯死はない(マサキ、シャリンバイなど4種)、3.fv/fm値の低下や脱葉があるが個体の枯死はない(クスノキ、カゴノキなど4種)、4.fv/fm値の顕著な低下や脱葉が起こり枯死がみられる(タブノキ、ホルトノキなど9種)、5.処理木がすべて枯死する(ヤマモモ、ムクノキ)。広葉樹による海岸林造成にあたっては、各樹種の特性を理解した上で植栽場所を選択する必要がある。


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