| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-297  (Poster presentation)

本邦亜熱帯林における樹木細根の分解に伴う菌類群集の時間変動
Temporal variations of fungal communities during decomposition of tree fine roots in a subtropical forest in Japan

*松岡俊将(兵庫県立大学), 土居秀幸(兵庫県立大学), 大園享司(同志社大学)
*Shunsuke MATSUOKA(University of Hyogo), Hideyuki DOI(University of Hyogo), Takashi OSONO(Doshisha University)

森林において、樹木枯死体(リター)の分解は、炭素をはじめとする物質循環を考える上で不可欠なプロセスである。リターを構成するセルロースやリグニンといった有機物は、他の多糖類やタンパク質などと比べて難分解であり、その分解は主に菌類が担う。そのため、リター分解に関わる菌類群集や、その時空間動態は、菌類の果たす有機物分解と物質循環機能やその環境変動応答を考える上でも不可欠な情報である。
これまで、樹木落葉や木材を中心に、リター分解に伴う菌類群集の時間変動(菌類遷移)が報告されてきた。これは分解に伴うリターの化学性の変化や同所的に存在する他種との相互作用の結果生じていると考えられる。一方、樹木細根は樹木リターのおよそ3分の1を占めるものの、その分解に関連する菌類群集に関する知見は少ない。特に、熱帯・亜熱帯地域での調査例は温帯以北と比べても少ない。
本研究では、亜熱帯常緑樹林における樹木細根の分解と、それに伴う細根中の菌類群集の変動を調査した。調査はリターバッグ法とDNAメタバーコーディングを組み合わせて行った。沖縄県本島北部の森林プロットに、樹木細根を含むメッシュバッグ(乾燥重量で1.5g/袋)を合計30個設置した。設置から、3, 6, 12, 18, 24ヶ月後にそれぞれ3-6個を回収した。回収した細根のうち一部(直径1mm長さ1cmの断片を2つ)を菌類DNA分析用に除いたのち、熱乾燥し、重量とセルロース、リグニン、全炭素・窒素量を測定した。DNA分析用の細根断片は、表面洗浄の後にDNA抽出とITS1領域のアンプリコンシーケンスを行った。
本発表では、2年間にわたる細根の分解と、細根リターに関連する菌類群集の時間変動、そして両者の関係についての解析結果を報告する。


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