| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-10  (Poster presentation)

都市緑地2地点のカメムシ相
Heteroptera fauna in two points of urban green space

*岸田知磨(武蔵高等学校)
*Kazuma KISHIDA(Musashi High School)

近くの都市緑地では、過去の環境が似ていたと考えられることや、生物の往来があると考えられるので、生物相が似ているのではないかと考えた。そこで本研究では、カメムシ(異翅亜目のみ)に注目し、近くの都市緑地では生物相が似るのではないかという仮説を確かめることを目的とし、調査を行った。調査地は、直線距離が約500mで、互いに最も近い都市緑地である、武蔵学園(東京都練馬区; 以下、武蔵)と江古田の森公園(東京都中野区; 以下、江古田の森)の2地点で行った。調査は2019年11月から2020年2月まで、2020年7月から同年9月までの同じ週に両地点で計18回ずつ行った。見られたカメムシの種名と個体数を記録した。結果は、武蔵では30種391個体が、江古田の森では32種426個体が見られた。1個体しか見られなかったものは偶然侵入してきた可能性があるため、2個体以上が見られたカメムシをその地点に生息している種として考察を行った。両地点での個体数上位3種は共通しており、優占種は似ることがわかった。一方で、調査で見られた全種のうち、共通種は16種、非共通種が30種と違いがあった。優占種上位3種の利用植物のうち2種が草本を、1種がシダ植物を利用していることから、都市緑地のような植生管理が行われる環境では、成長の早い草本もしくはシダ植物を利用している種の方が、成長の遅い木本植物を利用している種より有利であり、これが共通種と非共通種の特徴の違いではないかと考えた。そこで見られた種の生活史に木本と草本どちらが関係するかを調べ、木本利用種、草本利用種の2群に分けた(どちらも利用する、またはどちらも利用しない種は含めなかった)。それぞれの群内において「共通種/全種」の割合を計算した結果、木本利用種は0%(0/10)、草本利用種は33%(6/18)となり、この2群には有意な差が認められた(p<0.05)。以上のことから、草本利用種の方が都市緑地において有利である可能性が示唆された。


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