| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-16  (Poster presentation)

鵡川のシシャモ降海仔魚数における北海道胆振東部地震による影響
Effects of the Hokkaido Eastern Iburi Earthquake on the number of seaward migrating shishamo larva in Mu river

*山本勝吾, 関根康介(立命館慶祥高等学校)
*Shogo YAMAMOTO, Kohsuke SEKINE(Ritsumeikan Keisho S.H.)

背景と目的
 むかわ町には、日本固有種シシャモ(Spirinchus lanceolatus)が遡上する数少ない川である一級河川鵡川が流れている。むかわの町魚であるシシャモの漁獲量は、地震前から減少傾向にあり、えりも以西のシシャモはレッドリスト「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定されている。加えて、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震で、むかわ町は震度6強の揺れが観測されており、山林・河川ひいてはシシャモへの影響を危惧した。
そこで、河川でのシシャモの動向に注目し、北海道胆振東部地震がシシャモの生存に影響を与えているか明らかにすることを目的とした。今後の資源増大のきっかけとなればと考える。(2020年秋の漁獲量は記録的不良となった)

生態
 シシャモは、北海道太平洋沿岸のみ生息する北海道固有の遡河回遊魚である。産卵のため、10月~12月に、限られた河川に遡上し、河底に粘着卵を産み、翌年4~5月にふ化し、仔魚はただちに降海する。太平洋で回遊し、翌年秋に成熟したシシャモは遡上する。産卵後、雄は死ぬが、雌の一部は翌年再び産卵するといわれている。

研究と考察
 本研究では、毎年行われている鵡川のシシャモ親魚捕獲数、鵡川地点別産着卵密度、鵡川シシャモ降海仔魚数のデータを使用し、それぞれに相関係数を求め、シシャモの遡上数、産着卵、降海仔魚数での推移を地震前後で比較した。その結果、生存傾向の減少が確認された。しかし、北海道胆振東部地震直後、鵡川で多くの余震を体験した産着卵が遡上した2020年秋が、地震がシシャモに与える影響の本格的始まりの年と考えられる。その降海仔魚は2021年春である。また、地震による河川上流山林の「林地崩壊」が鵡川・シシャモ産着卵環境へおよぼす影響なども懸念される。今後、鵡川の河川環境の変化について調べ、シシャモの生存との関係を調査する必要があると考える。


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