| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S02-3  (Presentation in Symposium)

西日本常緑カシ林土壌における二酸化炭素排出とメタン吸収に対する温暖化影響
Warming effect on soil CO2 efflux and CH4 absorption in an evergreen oak forest in Western Japan

*寺本宗正(鳥取大学), 近藤俊明(国際農研), 梁乃申(国立環境研究所), 小嵐淳(原子力機構), 安藤麻里子(原子力機構), 曾継業(国立環境研究所), 孫力飛(国立環境研究所), 中根周歩(広島大学), 荒巻能史(国立環境研究所)
*Munemasa TERAMOTO(Tottori Univ.), Toshiaki KONDO(JIRCAS), Naishen LIANG(NIES), Jun KOARASHI(JAEA), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Jiye ZENG(NIES), Lifei SUN(NIES), Kaneyuki NAKANE(Hiroshima Univ.), Takafumi ARAMAKI(NIES)

 土壌からは多量の二酸化炭素(CO2)が土壌呼吸として排出されており、土壌呼吸のうち半分以上は、土壌有機炭素の微生物による分解(微生物呼吸)に起因するものとされる。微生物呼吸は温度の上昇に対して指数関数的に上昇する性質をもつため、地球温暖化によって土壌呼吸および微生物呼吸が増加し、さらに温暖化に拍車をかけるという悪循環が懸念されている。その一方で、土壌はメタン(CH4)の吸収源としても機能しているが、土壌CH4フラックスへの温暖化影響に関しては、統一的な見解が得られていない。これら土壌炭素フラックス(CO2、CH4)が、長期的な温暖化条件下でどのように変化するのかは、温暖化の将来予測の観点からも重要な点であるが、それらを検証するための長期観測データは非常に限られている。
 本研究では、東広島のアラカシ林に国立環境研究所が独自に開発した自動開閉チャンバーシステムと、土壌を温暖化するための赤外線ヒーターを設置し(2007年 9月)、以降連続的に土壌CO2フラックスの観測を行った。また、2020年7月より新たにCH4分析計も導入し、土壌CH4フラックスの連続観測も開始した。微生物呼吸観測のために、チャンバー周辺は深さ40 cmまでチェンソーで根切りを行った後に塩ビ板を挿入し、根呼吸を遮断した。温暖化を行わない対照区と温暖化区の微生物呼吸およびCH4フラックスを比較し、温暖化がこれら土壌炭素フラックスに与える影響を評価した。
 本講演では、長期的な温暖化が土壌炭素フラックスにおよぼす影響に関し、長期観測に基づく定量的な評価結果を紹介するとともに、その原因となるメカニズムに関しても議論したい。


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