| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S15-4  (Presentation in Symposium)

送粉サービスにおける生態学的集約化:農地景観のもつ潜在的な生息地機能を引き出す
Ecological intensification on pollination services: exploiting potential functions as habitat for pollinators in agricultural landscapes

*永野裕大(筑波大・院・保全生態), 宮下直(東大・農), 滝久智(森林総研), 横井智之(筑波大・院・保全生態)
*Yuta NAGANO(Univ. of Tsukuba), Tadashi MIYASHITA(The Univ. of Tokyo), Hisatomo TAKI(FFPRI), Tomoyuki YOKOI(Univ. of Tsukuba)

作物生産の向上と生物多様性保全の間に存在するトレード・オフの解消は、持続的な生物多様性保全における喫緊の課題である。近年、「生態学的集約化(Ecological intensification)」という概念が、トレード・オフ解消の重要な視点として注目を集めている。ヨーロッパなどの大規模農地景観では、農地の一部を植生帯に置換する生息地の再造成が最も効果的な人為的管理であることが明らかになりつつある。一方、日本も含めたアジアモンスーン気候下の小規模農地景観には、元来、畦畔植生といった多くの生息地がパッチ状に存在している。そのため、適切な人為的管理によって、生態学的集約化を比較的容易に実証・実現できるはずである。本研究では、実現可能なレベルでの生態学的集約化の実証を目的とし、畦畔での人為的管理がソバの送粉サービスに与える効果に着目した。ソバの開花時期に、畦畔植生を維持した畑と除去した畑で、訪花昆虫個体数および結実率の調査を行った。その結果、畦畔植生を維持することで、ソバの送粉サービスが向上することが明らかとなった。さらに、この効果の発現機構を明らかにするために、畦畔植生のもつ訪花昆虫の越夜場所としての生息地機能に着目し、スウィーピング法によって昆虫を採集した。その結果、一部の訪花昆虫が越夜場所として畦畔植生を利用しており、そのような種の個体数が植生を維持した畑で増加していた。従って、適切な人為的管理は、畦畔植生に潜在する生息地機能を引き出すことで、ソバの送粉サービスを局所的に高めていることが明らかとなった。本発表では、これらの結果と、得られた基礎生態学的な知見に基づいて提言される費用対効果や実効性の高い人為的管理について紹介する。


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