| 要旨トップ | ESJ68 自由集会 一覧 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W09  3月18日 17:30-19:00 Room H

菌種間競争と有機物分解の関係を炭素配分戦略からモデル化する
Carbon allocation models to explain decomposition of organic substrates by competing fungi

深澤遊(東北大学)
Yu FUKASAWA(Tohoku Univ.)

菌類は陸上生態系で有機物の無機化を担う主要な生物群だが、多菌種からなる菌類群集の有機物分解機能を、個々の菌類の分解機能から予測することは困難である。その理由は、2種以上の菌類が存在すると有機物をめぐる競争が起こり、その結果が菌類群集の組成に影響するだけでなく、競争のコストが各菌類の分解機能自体に影響する可能性があるためである。密接に関係する菌種間競争と有機物分解の関係を理解するためには、菌類が有機物分解によって得た炭素を、競争のための二次代謝物質生産、有機物分解のための酵素生産、生長、呼吸のどれに配分するかという炭素配分戦略を詳細に明らかにする必要がある。この自由集会では、枯死木を分解する木材腐朽菌を対象として、菌類の炭素配分戦略から木材腐朽菌の群集発達・材分解を説明するシミュレーションモデル作成の試みを紹介する。まず、上村が木材を分解中の菌類のバイオマスと放出する二酸化炭素量の変遷から菌類の生理活性について紹介する。次に深澤が、2種の菌類が競争関係にある場合に材分解に起こる変化について紹介する。続いて木村が、2種の菌類が競争関係にある場合の菌類の代謝の変化について紹介する。さらに三浦が、菌類の代謝特性を変数として組み込んだ2種間競争のシミュレーションモデルについて紹介する。最後に深澤が、菌類の多様性が材分解に与える影響について紹介する。全体を通して、木材腐朽菌の炭素配分戦略について情報を共有し理解を深めるとともに、モデルの妥当性や2種間競争モデルを多種間競争モデルへと拡張する際の留意点などについて議論したい。

[W09-1]
真菌バイオマスは腐朽材の分解速度にどのように影響するか *上村真由子(日本大学)
How fungal biomass affect decomposition rate of dead wood? *Mayuko JOMURA(Nihon Univ.)

[W09-2]
2種間競争が木材腐朽菌による材分解に与える影響 *深澤遊(カーディフ大学, 東北大学)
Effects of fungal interspecific competition on wood decomposition *Yu FUKASAWA(Cardiff Univ., Tohoku Univ.)

[W09-3]
温度ストレスと菌種間競争が菌類の炭素配分戦略に与える影響 *木村瑳月, 深澤遊(東北大学)
Effects of temperature stress and interspecific interactions on carbon allocation strategies of fungal mycelia *Satsuki KIMURA, Yu FUKASAWA(Tohoku Univ.)

[W09-4]
菌種間競争のエージェントベースシミュレーション *三浦政司(鳥取大学), 深澤遊(東北大学)
Agent-based simulation for fungal interspecific competition *Masashi MIURA(Tottori Univ.), Yu FUKASAWA(Tohoku Univ.)


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