| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


自由集会 W16-2  (Workshop)

震災後に生育地が広がった海浜植物の今
Expanding distribution of coastal sand dune plants after the earthquake disaster

*岡浩平(広島工業大学), 栗栖寛和(広島工業大学), 平吹喜彦(東北学院大学), 松島肇(北海道大学)
*Kohei OKA(Hiroshima Institute of Tech.), Hiroto KURISU(Hiroshima Institute of Tech.), Yoshihiko HIRABUKI(Tohoku Gakuin University), Hajime MATSUSHIMA(Hokkaido University)

砂浜や砂丘に生育する海浜植物は、海岸侵食や砂丘の開発によって、生育地が大幅に減少し、多くの種が絶滅の危機に瀕している。このような状況下において、2011年3月の大津波による大規模攪乱を受けた海浜植物は、砂浜では群落の消失なども確認されたが、倒壊した海岸林内に生育地を広げる現象も明らかとなった。しかし、その後の盛土や防潮堤の建設などの復興事業によって、生育地を拡大した海浜植物も大きな影響を受けてきたと予想される。しかしながら、復興事業による海浜植物の影響は十分に評価されていないことから、①固定測線による植生の変化の追跡、②ケカモノハシを指標とした広域的な海浜植物の分布を調べることで、大津波後の海浜植物の現状を調べた。その結果、海浜植物は、倒壊した海岸林内において、盛土を回避したエリアで多くの種が出現した一方、天然更新したクロマツの成長とともに、種数や被度が減少傾向にあることがわかった。また、海浜植物のケカモノハシは、盛土上にはほとんど分布しておらず、盛土を回避したエリア、もしくは防潮堤より海側の砂浜に集中して分布した。ケカモノハシの個体サイズを比較すると、砂浜は小さい個体が多かった一方、陸側の盛土を回避したエリアは、大きい個体が多かった。このことから、盛土を回避したエリアは、震災直後はケカモノハシの発芽・定着が起きたものの、ここ数年は新たな発芽・定着が減少していることが示唆された。また、砂浜については、防潮堤を既存の位置よりも後退させた場所にケカモノハシが多く、セットバックによって砂浜の幅が広くなったことで、ケカモノハシの生育地が確保されたことが示唆された。


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