| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-293  (Poster presentation)

異なる森林タイプにおけるササの総一次生産 【B】
Gross primary production of dwarf bamboo, sasa in different forest types 【B】

*蔡一涵(筑波大学), 井田秀行(信州大学), 廣田充(筑波大学)
*Yihan CAI(Tsukuba Univ.), Hideyuki IDA(Shinshu Univ.), Mitsuru HIROTA(Tsukuba Univ.)

ササは、東アジア域の積雪地帯の森林で優占し、懸念される大気中のCO2吸収源として重要しされつつある。発表者らも、ササ群落の総一次生産量(以降 GPP)が森林全体のGPPの16〜 25 %を占めることを報告した(Cai et al. 2021)。この研究では、ササ群落GPP、ササ群落GPPの季節変動やその制御要因は、同一林内でも林冠閉鎖区(林冠が閉じた区)とギャップ区(林冠が空いた区)で異なることを報告した。これは林冠構造によって生じる林床環境やササ分布の違いに由来し、同一林内のみならず、異なる林冠構成種を持つ森林間でも異なると考えられる。本研究では、林冠構成種が異なる3つの森林―落葉広葉樹林、常緑針葉樹林、針広混交林を対象に、1)林床ササ群落 GPP の推定、2)ササ群落 GPP の季節変動パターンの把握およびその制御要因の解明、および3)森林全体の GPP に対するササGPPの貢献度の推定を目的とした。落葉広葉樹林内は林内に顕著なギャップーモザイク構造を持っていたため、ササ群落GPPの推定は林冠区とギャップ区でそれぞれ行われた。
林床ササ群落GPPは落葉広葉樹林の林冠閉鎖区とギャップ区、常緑針葉樹林、針広混交林でそれぞれ178.6と276.7、190.8、176.8 g C m-2 yr-1であった。落葉広葉樹林の林冠閉鎖区とギャップ区や針広混交林ではササ群落GPPは春に最も高く、夏に向かって減少し、秋に再度上昇する季節変動を見せたが、常緑針葉樹林では季節変動は見られなかった。また、各森林タイプにおいて光が最もササ群落GPPの季節変動に影響を与えたが、光以外の制御要因は森林タイプごとに異なった。最後に、年間のササGPPを森林生態系スケールで推定した結果、落葉広葉樹林、常緑針葉樹林、針広混交林でそれぞれ2.1、1.9、1.8 t C ha-1 yr-1であり、森林生態系GPPへの貢献度がそれぞれ13.1、19.1、11.2 %であった。本発表はこれらの結果をもとに、異なる森林タイプにおけるササGPPについて考察を行う。


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