| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) F03-01  (Oral presentation)

複雑な生活環を持つ複数の寄生虫は、宿主操作の競合下でいつ共存できるのか?【S】
When can multiple parasites with complex life cycles coexist under conflicts of host manipulation?【S】

王之微(国立成功大学), 陳宣汶(国立嘉義大学), 佐藤拓哉(京都大学), *仲澤剛史(国立成功大学)
Chih-Wei WANG(Natl. Cheng Kung Univ.), Hsuan-Wien CHEN(Natl. Chiayi Univ.), Takuya SATO(Kyoto Univ.), *Takefumi NAKAZAWA(Natl. Cheng Kung Univ.)

寄生虫の多様は高く、生態系で重要な役割を果たしているが、その多様性のメカニズムはまだ十分には理解されていない。多くの寄生虫は複雑な生活環を持ち、宿主操作を通じて異なる宿主間の捕食を通じて次の寄主への移行を促進する。複数の寄生虫が同じ中間宿主を共有しながら、異なる終宿主へ移行する場合、宿主操作戦略は二つの対立(conflicts)に直面する。第一に、宿主操作によって非宿主捕食者による捕食が増加し、「行き止まり(dead-end)」となる危険がある。第二に、共感染した中間宿主内での寄生虫間相互作用が、宿主操作を複雑にする可能性がある。これらの状況下で宿主操作を行う寄生虫がどのように競争し、共存するのかを明らかにするため、私たちは2種の寄生虫、1種の中間宿主(被食者)、および2種の終宿主(捕食者)の個体群動態を記述する数理モデルを構築した。競争的排除の原理によれば、2種の終宿主(およびそれぞれの寄生虫)は中間宿主を巡る競争のため共存できないと予測される。しかし私たちの結果は、宿主操作を行う寄生虫がこの結果を変化させうることを示した。解析の結果、寄生虫の共存を促進する三つの条件を特定した。(i) 競争的に劣る捕食者に感染する寄生虫が、非選択的な宿主操作戦略を採用することにより、行き止まりに陥りやすいこと。(ii) 共感染した中間宿主が操作されることで、競争的に優れた捕食者による捕食が減少し、競争的に劣る捕食者による捕食が増加すること。(iii) 宿主―寄生虫群集の動態が大きく変動しないこと。今後の研究では、これらの条件が実際に成立する可能性を評価することが望まれる。また、本モデルでは広範なパラメータ空間において複数の安定状態が出現することが示され、群集構成におけるレジームシフトの潜在性が示唆された。これらの結果は、寄生虫の多様性メカニズムとその脆弱性に新たな洞察を与え、より複雑なシナリオに関する今後の研究の基礎を提供する。


日本生態学会