| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) H03-02 (Oral presentation)
モクレン科のホオノキは、北海道から九州まで広域に分布する。その花は繁殖枝の枝端に単生することが知られ、枝は開花後に花柄下部の側葉芽を開いて伸長する。
今回、筆者は混芽内の側葉芽が花芽に転じている個体を見出した。この単出集散花序を形成するホオノキは、展葉した偽輪生状互生葉の上に二つの蕾を並べて頂花、側花の順に開花する。その開花が重なることもある。開花後の繁殖枝は、花柄の脇に仮頂芽を出し、当年枝の伸長と冬芽形成を維持する。単散花序は一部の繁殖枝にのみに形成され、比率は全繁殖枝の20%に満たなかった。雄ずい数/雌ずい数の平均値を、既知の単生花のみを有するホオノキとの間で比較した結果、単生花型1.18に対して、単散花序型で1.35とやや高い数値が示された。
実地調査と写真判定によって、単散花序型の個体群は、福岡県から長野県にかけての低標高域に見出された。単散花序型と単生花型には、以下の差異がある。
1.樹皮 単散花序型は茶褐色で点状皮目を有し、縦裂する。単生花型の樹皮は滑らかな
灰白色を呈する。
2.樹形 孤立木において、単散花序型は上方に拡散する。単生花型は紡錘形になる。
3.枝強度 単散花序型は折れやすく、単生花型は曲げ強度が大きい。
4.葉形 単散花序型の葉の最大幅位置は、単生花型に比べて葉端の方に寄っている。
5.冬芽 単散花序型は、冬芽の大半が花芽(混芽)であり、春季一斉型の開花を行う。
6.総苞 単散花序型の苞(総苞)は堅牢で、白色を呈する。単生花型の苞は紅茶色で、
短期間に萎凋する。
双方には繁殖生態の諸面に大きな差異があり、形態学的にも明瞭に識別することが出来る。単散花序型は、樹形と材質の面からみて多雪環境には馴染まないが、有性繁殖に対する繁殖努力があり、寒冷気候に対する適応が見て取れる。表現形の比較において、母系、派生系の直接的な系統関係を示す形質は見当たらない。