| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-09  (Oral presentation)

野尻湖における水草分布と魚類群集構造からみた魚類への影響評価
Aquatic vegetation distribution and effects on fish in Lake Nojiri.

*立川優芽, Miles Isao PETERSON(富山大学)
*Yume TACHIKAWA, Miles Isao PETERSON(Toyama univ.)

[背景]長野県北部に位置する野尻湖では、水草を摂食するソウギョの放流により、約40年間にわたり水草が消滅した状態が続いていた。 さらに、1990年代以降に外来魚コクチバスが定着し、在来魚が減少した。しかし近年、かつて失われた在来水草が再び確認され、湖内では植生回復の兆しがみられている。本研究では、水草の復元過程と魚類群集との関係を明らかにすることを目的とし、水草の季節的変動および魚類の水草利用状況を調査した。
[調査方法]2024年6月から11月および2025年5月から11月にかけて、湖内3地点・3水深(0.5m、1.5m、2.5m)でシュノーケリングによる水中撮影を実施し、2025年には深所で水中ドローンを用いた追加調査を行った。撮影映像から水草の種数・本数、魚類の種数・個体数を計数し、一般化線形混合モデル(GLMM)により環境要因が水草密度および魚類密度に与える影響を解析した。
[結果]調査の結果、2024年に9種、2025年に11種の在来水草が確認され、うち5種は長野県レッドリスト掲載されている種であることが分かった。水草密度は年々増加傾向を示し、両年とも9〜10月に増加し11月に減少する季節変動が確認された。魚類は各年6〜7種が観察され、全期間を通してコクチバスが確認された。水深が深くなるにつれて水草密度は低下したが、水深6〜8mではセンニンモが新たに確認された。水草がパッチ状に分布する深所では多数の稚魚が観察され、解析の結果、水草本数が多い地点ほど魚類個体数、とくに稚魚個体数が有意に増加する傾向が示された。
[考察]水草は稚魚の隠れ場所として機能し、外来魚が優占する環境において在来魚の生存を支える重要な役割を果たしている可能性が示された。本研究は、コクチバスの駆除が困難な環境下において、水草の保全が在来魚の生存を支える可能性を示唆するものである。また、野尻湖における水草復元は継続中であり、今後も長期的なモニタリングと在来水草の保全が求められる。


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