| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) I01-12 (Oral presentation)
日本沿岸では海洋開発や資源利用が進む一方で、小型鯨類の分布に関する調査努力量は特定の海域に偏っており、全国的な基礎情報は依然として限られている。本研究では、環境省の「風力発電等に係る環境アセスメント基礎情報整備モデル事業」に伴い取得された、受動的音響モニタリングデータを活用し、日本沿岸における小型鯨類の分布と出現状況を整理した。
北海道から九州までの沿岸域に設置された音響観測点のデータを用いた。15昼夜連続で取得されたデータから、小型鯨類のエコーロケーション鳴音を検出した。鳴音をマイルカ科、ネズミイルカ科に分類し、全観測期間を100%とした際の検出時間割合を指標として、小型鯨類の出現状況を評価した。
解析の結果、沿岸定住性の強いネズミイルカ科のスナメリNeophocaena asiaeorientalisの主要生息域では高い検出割合が継続的に認められた。一方、スナメリの生息域外では、小型鯨類が断続的に検出される地域、低い頻度で検出される地域、ほとんど検出されない地域に区別された。したがって、小型鯨類の出現頻度は、全国でおおむね4段階に分類可能であると考えられた。昼夜の検出傾向は海域により異なり、摂餌努力指標となる鳴音の検出に一定の傾向は見られなかった。複数の観測点を有する海域では、同一海域内であっても地点間で出現状況が大きく異なる場合と、類似した傾向を示す場合の双方が確認された。これらのことから、小型鯨類の出現は空間的・時間的に高い不均一性を有することが示唆され、海洋開発においては、海域および時期ごとに環境アセスメントを継続的に実施する必要があると考えられた。
本研究は、環境アセスメントデータを活用することで、日本沿岸における小型鯨類の分布を定量的に可視化した。これらの結果は、今後の海洋開発に伴う影響評価や、温暖化による分布変化を観測するための基準情報として重要であり、継続的かつ空間的に広がりのあるモニタリングの必要性を示すものである。