| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-10  (Oral presentation)

大規模森林火災後の更新は栄養繁殖に由来するか:大船渡スギ人工林の例
Does regeneration following an extreme wildfire originate from vegetative reproduction? The case of the Ofunato plantation forests

*小山明日香(森林総研), 酒井敦(森林総研・東北), 齋藤智之(森林総研・東北), 野口麻穂子(森林総研・東北), 澤田佳美(森林総研・東北), 藤井佐織(森林総研)
*Asuka KOYAMA(FFPRI), Atsushi SAKAI(Tohoku, FFPRI), Tomoyuki SAITOH(Tohoku, FFPRI), Mahoko NOGUCHI(Tohoku, FFPRI), Yoshimi SAWADA(Tohoku, FFPRI), Saori FUJII(FFPRI)

気候変動に関連した森林火災が世界各地で激甚化し、国際課題となっている。大規模森林火災は、森林資源の焼失、炭素の大量放出、生物多様性の減少に加え土砂災害リスクを高める。火災直後の下層植生の回復は、火災後の森林動態を規定するだけでなく、土壌侵食や土砂流出を抑制するうえでも重要である。

日本は湿潤な気候のために森林火災が比較的少ないものの、近年冬季の乾燥等に伴う森林火災が頻発している。日本の森林は約4割を人工林が占めており、2025年2月に岩手県大船渡市で発生した大規模森林火災においても、被害を受けた森林の約半分がスギ人工林だった。スギ人工林の下層植生は暗い光環境と厚いリター被覆により栄養繁殖由来の更新に依存する傾向があると考えられるが、火災後の更新については知見が乏しい。本研究では、大船渡市のスギ人工林を対象に、火災直後の下層植生の更新動態を検証した。

2025年6~9月にかけて火災強度(非/弱/中/強燃焼)の異なる21調査サイトを設定した。調査サイトに1m2区を設定し、出現した全植物個体の種名および更新由来(種子発芽/栄養繁殖)を記録し、火災強度の影響を解析した。

結果、全64種779個体を記録した。種子発芽由来の植物種数および個体数は中燃焼サイトで最も多かった一方、栄養繁殖由来の種数および個体数は非燃焼サイトで多かった。出現した植物種数および個体数は、更新由来に関わらず木本および多年生草本が多くを占めたが、構成種は異なっていた。一方、北米原産の外来種マルバフジバカマは、非燃焼サイトでは栄養繁殖由来、一部の強燃焼サイトでは種子発芽由来で確認された。

大規模火災はスギ人工林の下層植生の更新形態を顕著に変化させ、火災後は栄養繁殖体が枯死し種子発芽由来の更新に依存したと考えられる。今後、大規模火災後の生態系回復に向けて、外来植物の影響を含め植生回復過程を検証する必要がある。


日本生態学会