| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-02  (Oral presentation)

ケリ(チドリ科)幼鳥の自立過程にみられる同種の群れの影響
The influence of conspecific flocks on the independence process of juvenile Grey-headed Lapwings

*脇坂英弥, 脇坂啓子(関西ケリ研究会)
*Hideya WAKISAKA, Keiko WAKISAKA(Grey-headed Lapwing Kansai RS)

【緒言】一夫一妻制の配偶システムをもつケリは、地上営巣をして抱卵・育雛を行う。雛は4-6週齢ほどで飛翔可能となるが(幼鳥とよぶ)、その後も親鳥や兄弟と行動をともにする。しかしながら幼鳥がいかに自立し、出生地からどこへ分散するのかは詳しく分かっていない。脇坂・脇坂(2024)は、GPSを装着した幼鳥1羽の追跡から、自立前の幼鳥が飛翔可能となってから4週間ほどで急激に行動圏を広げることを示した。行動圏拡大のきっかけは同種の群れとの接触である可能性と、その拡大時に複数の群れを目指して移動する可能性が推測された。これらの検証のため、本研究では追跡個体を増やして調査を行った。
【方法】調査は京都府南部の巨椋池干拓地で行った。個体識別ができるよう幼鳥52羽に色足環で標識し(2025年)、うち4羽にGPSを装着して自立に至る行動を追跡した(2024-2025年)。あわせて各親子の営巣地周辺の群れの動きを記録した。
【結果・考察】ケリの群れが親子と接触した際、1週間以内にとった幼鳥(18羽が追跡可能)の行動をみた。結果、親元から離散したのは14羽、親元に残留したのは4羽と、離散した幼鳥の方が有意に多かった(p<0.05)。次にGPSを装着した幼鳥4羽(A-D)の軌跡をみると、標識個体と同じく群れと接触した9-10週齢で離散がみられ、急激に行動圏を拡大した(A:48.6-2,941.4ha、B:20.4-100.3、C:28.9-136.7ha、D:5.3-44.6ha)。その際、幼鳥はひとつの群れにとどまらず、複数の群れに移動することが分かった。以上、ケリ幼鳥が自立するきかっけとして、同種の群れとの接触が影響していることが明らかとなった。群れを形成する進化的要因として、うすめの効果、共同防衛、餌場の情報収集などが知られているが、加えて本種の幼鳥の自立を促す効果もあると考えられる。また幼鳥は複数の群れを移動しながら、餌場などを学習したり自分に適した群れを探索したりする機会を得ている可能性があり、今後の調査が必要である。


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