| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-03  (Oral presentation)

おっぱいの数と子どもの数:ルールに従うまじめな日本のリスたち【発表取消/Cancelled】
Mammary number and litter size: Rule-following Japanese squirrel species.【発表取消/Cancelled】

*鈴木圭, 安藤裕萌(森林総研九州)
*Kei K SUZUKI, Yuho ANDO(FFPRI Kyushu)

繁殖戦略がどのように進化するかを理解するうえで、発生・解剖学的な制約と、生態学的条件の相互作用を切り分けて捉えることは重要である。本研究では、主要な生物地理区に広く分布し、樹上性—地上性の遷移が繰り返し生じ、乳頭数に大きな種間変異をもつリス科(Sciuridae)を対象に、乳頭数進化と産子数との関係を系統比較の枠組みで検証した。74種のデータに対して系統比較解析を行い、乳頭数—産子数スケーリングの評価を実施した。その結果、乳頭数には明確な地理的構造があり、高緯度(北方)に向かうほど増加し、熱帯域では減少する傾向が確認された。さらに、産子数は生態モード(樹上性/地上性)をまたいで乳頭数と正の関係を示し、従来「樹上性リスは one-half rule(産子数≈乳頭数の1/2)から外れやすい」という理解に反して、樹上性種の半数以上が地上性リスで推定される one-half rule の信頼区間内に収まった。一方で、この適合は熱帯域に向かうほど低下し、保存的な解剖学的上限(乳頭数)に対して、その実現(実際の産子数)が地理的・生態学的な影響により系統的に調整される可能性が示された。以上の結果は、(i)乳頭数が繁殖力に対する解剖学的な上限(ceiling)を規定し、(ii)その上限の利用率を生態・地理が予測可能に変動させる、という階層的構造を支持する。


日本生態学会