| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-04  (Oral presentation)

イトヨ野生集団における繁殖形質の季節的動態
Seasonal dynamics of reproductive traits in a wild three-spined stickleback population

*川本麻祐子(東京大学), 細木拓也(北海道大学), 岸田治(北海道大学), 石川麻乃(東京大学)
*Mayuko KAWAMOTO(Tokyo Univ.), Takuya HOSOKI(Hokkaido Univ.), Osamu KISHIDA(Hokkaido Univ.), ASANO ISHIKAWA(Tokyo Univ.)

一年で環境条件が大きく変化する高緯度地域では、子の生存に適した季節に繁殖する季節性繁殖を示す種が多くみられる。哺乳類や鳥類、魚類では、主に日長条件に応じて視床下部-下垂体-性腺軸の活性が変化し、繁殖時期が制御されることが知られている。しかし、日長に加えて様々な条件が変化する自然環境下において、どのような分子が季節変化に応答し、繁殖を制御するのかは明らかになっていない。北半球に広く生息するイトヨ (Gasterosteus aculeatus) では、下垂体での甲状腺刺激ホルモン遺伝子TSHB2の発現が季節性繁殖に関与することが分かってきた。TSHB2の発現量は短日条件下で上昇し、性成熟を抑制する一方、長日条件下では減少し、性成熟が促進される。しかし、このような発現変化は実験室内での極端な日長条件下でのものであり、水温や光条件、栄養条件などが複雑に変化する自然環境下での、TSHB2発現量や繁殖形質の季節的変動は明らかになっていない。そこで本研究では、北海道苫小牧市の幌内川に生息するイトヨ野生集団を2024年から2026年にかけて2ヶ月おきに採集し、TSHB2発現量や繁殖形質の変化を解析した。
まず集団の年齢構成を明らかにするため、耳石の年輪を解析した結果、集団中にはその年に生まれた個体と、その前年に生まれた個体の二世代が含まれていた。また、性成熟の指標として生殖腺指数 (GSI) を解析した結果、オスは生まれた翌年の一歳でほぼ全ての個体が性成熟することに対し、メスでは一歳と二歳で成熟する個体が混在することが明らかになった。また、GSI の値はオスでは6月から12月にかけて高い一方、メスでは4月から8月にかけて高く、季節間での生殖腺の発達パターンは雌雄で異なっていた。発表ではこのような年間を通じた性成熟の進行とTSHB2発現量との関係を議論し、その季節性繁殖における役割を考察する。


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