| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) I03-05 (Oral presentation)
テロメアは染色体末端の反復DNA配列であり、体細胞のテロメアは細胞分裂や酸化ストレスにより短縮し、老化や寿命、疾患感受性と関連する。生殖細胞ではテロメラーゼ活性によりテロメア長が維持され、受精率や初期胚発生に影響することが示唆されている。そこで本研究では、サケ科魚類サクラマスのオスの生活史形質(降海型と残留型)の違いと生殖細胞の精子テロメア長の関連性を解析した。本研究では、北海道中西部に位置する厚田川および毘砂別川で降海型および残留型オスの精子を採取し、定量PCR法により相対的テロメア長を測定した。その結果、残留型オス由来の精子は降海型オスより有意にテロメアが長いことが明らかになった。これらの結果は、残留型オスが降海型オスに比べて質の高い精子を投資する繁殖戦略に関連すると考えられる。さらに、同一メスの卵を用いた半兄弟集団を作成し、親の生活史形質間で稚魚のテロメア長も評価した。その結果、稚魚も同様に残留型由来の子でテロメアが長い傾向が示された。初期段階でテロメアが長い稚魚は、生存率や寿命の向上に寄与する可能性を示唆しており、生活史の違いが精子のテロメア長を介して子の適応度に大きく影響していると考えられた。