| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-06  (Oral presentation)

内部共生性二枚貝イソナマココノワタズキン(ウロコガイ科)の繁殖生態と生活環
Reproductive ecology and lifecycle of the endosymbiotic bivalve Entovalva lessonothuriae

*小柴隆広(近畿大学), Jean TANANGONAN(Kindai Univ), 後藤龍太郎(京都大学)
*Takahiro KOSHIBA(Kindai Univ), Jean TANANGONAN(Kindai Univ), Ryutaro GOTO(Kyoto Univ)

共生生物は宿主との生活に対して様々な適応を示すが、特に繁殖生態に関する適応はよく知られている。ウロコガイ科Galeommatidaeは、海産の底生生物へ共生する種を多く含む小型の二枚貝類の一群であり、各宿主に合わせた様々な適応を示すことが知られるが、多くの種についてその繁殖生態は不明である。ウロコガイ科の一種イソナマココノワタズキンEntovalva lessonothuriae(以下、本種)は、イソナマコHolothuria pardalisの食道内部に共生するという異色な共生様式や、一夫一妻性という貝類で唯一の繁殖様式で知られる。しかし、宿主への移入時期やつがいの形成時期などの繁殖生態に関する詳細は不明である。本研究では、季節を通じて個体群動態を追うことにより、本種の繁殖生態に関する詳細を解明した。また、本種は雄性先塾性雌雄同体であることが示唆されているが、直接的な証拠は確認されていないため、生殖腺の観察により性転換途中の両性個体を探索した。
生殖腺の観察では、両性個体が確認されたが、単独で確認されたすべての個体はメスであり、本研究におけるメスは最小で1.1 mmと成体のオスよりも小さかった。そのため、本種は性転換を行うことに加え、移入した宿主内のメスの有無によって性が決定する環境性決定である可能性が高い。また、本種は5月から翌年1月にかけて長期間繁殖し、幼生が放出されてから短期間で宿主へ移入すると予想される。さらに、1、3月では宿主へ無作為に定着し、5–11月ではつがいを形成しており、11–3月にかけて繁殖を終えた多くのメスが消失し、つがいが解消されると予想される。また、宿主へ移入する際は、無作為に移入するのではなく既にメスが共生する宿主へ選択的に移入し、そのような宿主を選択できなかった個体はメスとして宿主内に定着する可能性がある。本研究によって、本種は(1)性転換を伴う環境性決定性、(2)季節性のある繁殖・加入生態を持ち、(3)宿主へ選択的に移入する習性を持つ可能性が示唆された。


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