| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) J02-03  (Oral presentation)

有害赤潮藻類間の増殖相互作用と水温の影響
Temperature-dependent growth interactions between harmful algal species

*矢野諒子(水産技術研究所), 高井優生(九州大学), 山﨑康裕(水産大学校), 北辻さほ(水産技術研究所), 島崎洋平(九州大学), 紫加田知幸(水産技術研究所)
*Ryoko YANO(FRA), Yuki TAKAI(Kyushu Univ.), Yasuhiro YAMASAKI(National Fisheries Univ.), Saho KITATSUJI(FRA), Yohei SHIMASAKI(Kyushu Univ.), Tomoyuki SHIKATA(FRA)

海洋生態系の基礎生産を担う植物プランクトンの一部は赤潮を形成し,魚介類のへい死を引き起こす。令和3年9月に,北海道東部沿岸で本邦初となる渦鞭毛藻Karenia selliformisによる大規模赤潮が発生し,ウニ類やサケ類のへい死を伴う甚大な被害が生じた。近年の気候変動に伴う有害赤潮藻の分布拡大が懸念されている中,漁業被害の防除に向けた赤潮の予察および発生メカニズムの解明は喫緊の課題である。
渦鞭毛藻等の有害赤潮藻は単一種で赤潮を形成することが多く,栄養塩や光をめぐる資源競合に加えて,植物プランクトン間の増殖相互作用が単種優占化に寄与すると考えられている。本研究では,北海道におけるK. selliformis赤潮の単種優占化機構を明らかにするため,発生当初に現場海域で共存していた他種(珪藻Skeletonema marinoi-dohrnii complexおよび渦鞭毛藻Karenia mikimotoi)とK. selliformisの培養株を用いた二種混合培養試験を実施した。得られたデータをロトカ・ヴォルテラ競争方程式を用いて解析した結果,本種はいずれの他種に対しても強い増殖阻害効果を示した。また,アイソクライン解析から,珪藻S. marinoi-dohrnii complexとの混合時には両種の細胞密度に依存して優占種が変化する一方,K. mikimotoiはいずれの細胞密度で混在してもK. selliformisが優占することが示された。さらに,赤潮期間は現場水温が19 °Cから8 °Cへ低下した点に着目し,複数の水温条件下で二種混合培養試験を行い,水温が競合関係に及ぼす影響を検討した。その結果,競合種によって水温による種間相互作用への影響が異なり,特に珪藻S. marinoi-dohrnii complexに対するK. selliformisの競争係数は,低温で高い傾向にあることが示唆された。


日本生態学会