| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L02-04 (Oral presentation)
京都府北部に位置する京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林において、小型の森林性コウモリが小型のスズメ目鳥類ミソサザイの巣をねぐらとして利用していることが確認された。コウモリは夜行性・飛翔性の哺乳類であり、日中はねぐらで休息する。洞窟、樹洞、樹木の葉など様々な構造がねぐらとして用いられ、アリやシロアリ、鳥類など他の生物が形成した空洞を利用することもある。樹洞や樹皮の裂け目の下などを利用する森林性コウモリのねぐら選択に関しては、観察や近年増加している電波発信機を用いた追跡により、樹高や直径が大きく、ねぐら入り口の高さが高い樹木の利用が多いとされている。ミソサザイの雄は繁殖のためにコケ類などを用いて球形の巣を作成する。巣は、渓流沿いの崖、倒木や木の根の窪みなどの場所に、0.2〜2.0m程度の高さで水面上に作成されることが多い。調査地におけるミソサザイの繁殖期は3〜7月であり、雄がさえずりによって雌を巣に誘引し、誘引が成功するとその巣は繁殖に利用されるが、誘引が失敗すると利用されない。ミソサザイの巣利用を観察するために設置したカメラトラップにより、3カ所の巣においてそれぞれ複数回にわたりコウモリ類が侵入する行動が検出された。また、コウモリの侵入は6〜8月と10月に検出され、7月に最も多かった。カメラトラップによる検出は主に夜間に生じていたが、日中にもファイバースコープを用いた巣内の直接観察で別の2カ所の巣でコウモリが確認された。2025年10月に行ったファイバースコープ観察では2頭のコウモリが同一巣内で同時に見られた。巣入口にメッシュバッグを設置して捕獲および観察を行った結果、2頭はクロホオヒゲコウモリの雌と確認された。これまで本種のねぐらについては数例の単発的な報告があるのみであったが、本調査により水面上数十cm程度の低い位置にある鳥類の巣を利用することが示された。