| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L02-06 (Oral presentation)
海鳥は効率的に餌を得るために、探索的な採餌と再訪的な採餌を使い分けていると考えられ、その評価指標として採餌場所重複度が用いられる 。しかし、先行研究の多くは連続するトリップ間など短い時間スケールでの評価に留まっており、餌分布の変動性が異なる環境において、重複度の長期的な時間変化は区別できていなかった 。
本研究は、新潟県粟島で繁殖するオオミズナギドリを対象に、採餌場所重複度の時間変化を明らかにすることを目的とした 。対象種は、餌分布の変動性が高い日本海と、変動性が低い太平洋という対照的な環境を利用するため、環境特性の違いが重複度の減少パターンに与える影響を比較検証できる 。 バイオロギング調査により得られたGPSデータから、隠れマルコフモデル(HMM)を用いて採餌行動(ARS)を抽出し、カーネル密度推定により採餌場所利用分布を求めた 。トリップ間の重複度をBhattacharyya’s affinity(BA)を用いて算出し、トリップ間時間差がBAに与える影響を一般化線形混合モデル(GLMM)および一般化加法混合モデル(GAMM)を用いて海域別に解析した 。
解析の結果、405個体3227トリップのデータから、海域による顕著な違いが明らかになった 。太平洋へのトリップでは平均的な重複度が高く、20日以上経過しても重複度の減少は緩やかであった 。一方、日本海へのトリップでは重複度は全体的に低く、数日から十数日で急速に減少した 。
考察として、この時間構造の違いは利用海域の環境特性、特に餌パッチの変動性に起因すると考えられる 。海洋フロントが発達し餌パッチの変動性が低い太平洋では、同じ場所を繰り返し利用することで探索コストを軽減している 。対して、メソスケール渦により餌パッチの変動性が高い日本海では、環境の変化に合わせて柔軟に採餌場所を変更する戦略をとっていることが示唆された 。