| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-09  (Oral presentation)

ロングリードによる飼育水eDNA由来ミトゲノム全長のPCRフリー回収と多型検出
PCR-Free Long-Read Sequencing of Aquarium-Water Environmental DNA Recovers Complete Fish Mitogenomes and Resolves Individual Haplotypes

*水野ひなの, 田中秀典((株)豊田中央研究所)
*Hinano MIZUNO, Hidenori TANAKA(Toyota Central R&D Labs., Inc.)

環境DNAは非侵襲的な生物多様性調査に広く用いられているが、分解と低濃度を前提に短いバーコード領域に依存してきた。短鎖長のアンプリコン解析は、種検出には有効だが、ごく近縁な種の識別や詳細な種内多型解析には限界がある。一方、条件次第では水中環境DNA中にミトコンドリアDNA(mtDNA)全長などの長鎖断片が残存し得る。そこで本研究では、飼育水からmtDNA全長を取得し、個体レベルの多型まで扱うPCRフリー・ロングリード解析ワークフローを構築した。キンギョおよびメダカの飼育水を用いてろ過およびDNA抽出条件を検討し、PCRフリーとmtDNA全長のロングレンジPCRという2種の方法を比較した。ろ過時のろ紙孔径を約1.2 µmとし、DNA抽出は重力落下方式にすると長鎖DNAの回収効率が高かった。続くロングリード解析では、PCRフリーでも、16 kb超の長鎖リードを多数取得でき、de novoアセンブリによりmtDNA完全長を再構築可能であった。ロングレンジPCR法では、最大10万超のmtDNAリードを取得し、50~150倍程度のカバレッジに調節するサブサンプリングを行うことでmtDNA完全長のアセンブリに成功した。さらに、単独飼育水から得たキンギョのmtDNA全長アセンブリ配列の比較では、全長上の2座位で多型を検出し、2ハプロタイプを特定した。また、2座位をカバーする長鎖リードからリードレベルでのハプロタイプ割当ても可能であることを見出した。本研究で構築したワークフローは、養殖や保全などの管理環境における非侵襲的な高解像度の遺伝的モニタリングに有望であり、寄与個体数推定など混合集団解析への展開も期待される。今後は、野外環境への適用や核ゲノム領域への拡張についても検討を進める予定である。


日本生態学会