| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) M01-11  (Oral presentation)

人工樹洞とeDNA解析で解き明かす熱帯林水棲動物群集の鉛直・時間的変動
Artificial tree holes and eDNA analysis reveal vertical and temporal dynamics of aquatic metazoan communities in a tropical forest

*井坂友一(西双版納熱帯植物園), 包希吉乐(西双版納熱帯植物園), 邓丽芳(西双版納熱帯植物園), 吉田智弘(東京農工大学), 中村彰宏(西双版納熱帯植物園)
*Yuichi ISAKA(XTBG), Xijir BORJIGIN(XTBG), Lifang DENG(XTBG), Tomohiro YOSHIDA(Tokyo Univ. Agri. Tech.), Akihiro NAKAMURA(XTBG)

森林は多様な生物を育む生態系であり,東南アジアの熱帯林は生物多様性ホットスポットのひとつとして知られる.現在,森林生態系における生物多様性を理解するため,これまで見落とされがちだった樹上の生物群集に関する様々の研究が進行中である.樹皮の隙間や着生植物,樹洞などのマイクロハビタットは樹上の生物多様性を支える重要な要素である.雨水で満たされ雨季にのみ成立する樹洞は,樹上水棲生物の多様性を理解する鍵のひとつとなるが,樹洞を利用する生物群集の鉛直・時間的変動への理解は十分ではない.そこで本研究では,水を張ったプラスチック容器による人工樹洞と環境DNA解析を用い,熱帯林樹洞の雨季における水棲動物群集の動態を検証した.東南アジア熱帯林の北端に位置する中国雲南省シーサンパンナの演習林で同種樹木10本を選び,鉛直方向での水棲動物群集を比較するために各個体の林冠と林床に人工樹洞を設置した.また,その時間的変動を明らかにするため,雨季の6–8月に月1回採水を行った.そしてこれら計60サンプルについて,水質測定と環境DNA解析を実施した.得られた462 OTUのうち水棲動物46 OTUを用いた群集解析の結果,(1)ハエ類とワムシ類が優占し,(2)林冠と林床で42 OTUを共有した.さらに(3)6月と8月は林冠・林床で群集が概ね類似した一方,7月は林床が6月,林冠が8月に近い傾向を示し,(4)群集構造とOTU数に影響する主要因はpHであった.熱帯林雨季の樹洞における水棲動物群集の鉛直・時間的変動とその環境要因を示した本研究は,森林生態系における樹上マイクロハビタットが生物多様性に果たす役割を理解することにつながるであろう.


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