| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) M01-14 (Oral presentation)
ゾウミジンコ属Bosminaは世界各地の湖や池に優占して出現する動物プランクトンである。その1種であるBosmina tanakaiは日本で記載され、他に樺太半島・千島列島で生息が示唆される半固有種である。日本では青森以北に生息する北方系種と考えられてきた。しかし、2023年に芦ノ湖において、これに類似した形態のBosminaが採集され、本州にも広く分布している可能性が考えられた。これを検証するため本研究では、①芦ノ湖に出現したBosminaのDNAと形態に基づく種同定を行うとともに、 ②日本各地のダム湖でのB. tanakaiの分布状況を把握した。さらに、③芦ノ湖の個体群を対象に、同属種Bosmina longirostris個体群との関係を季節変動を調べることで解析した。
2023年4月に芦ノ湖で採集され個体の形態的特性を調べるとともに、ミトコンドリア16S領域とCOI領域のDNA塩基配列を用いて日本産のBosmina属4種との系統解析を行った。その結果、形態・分子系統解析ともにこれらがB. tanakaiであることを示した。
水辺の国勢調査で2017年-2021年に採集された動物プランクトン試料を検鏡し、B. tanakaiの出現状況を分析した。その結果、調べた49ダム湖のうち、B. tanakaiは北海道のみならず、本州のダム湖(岩手県1、長野県1、岐阜県2ダム湖)からも検出され、従来報告されていた北部に加え中部地方にも本種は広く分布していることが判明した。B. tanakaiはこれまで本州の湖沼では報告されていないことから、本種は近年南下している可能性もある。興味深いことに、いずれのダム湖でも同属種B. longirostrisとの共存が見られた。
芦ノ湖において、2024年10月から1年間、毎月動物プランクトンを採集し、両種個体群の季節変動を調べた。その結果、B. tanakaiは夏季と冬季にはB. longirostrisよりも個体群密度は高く、夏季を除き2種が共に出現した。この結果は、同属種であるにも関らず長期共存できる可能性を示唆する。その機構について、今後の課題として研究を進める予定である。