| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) M02-07 (Oral presentation)
外来種の分布拡大は全国的に問題となっており、拡散防止には、分布拡大メカニズムの解明が重要である。本研究では、利根川水系で近年分布域を急速に拡大しているチャネルキャットフィッシュ Ictalurus punctatus を対象に、食性・利用水域・行動を統合して評価し、餌利用特性や採餌場環境、水域間移動と体サイズ・生息地との関連を検討した。中流の淡水域(神崎)、下流の汽水域(河口堰)、最下流の汽水域(波崎)、大規模湖沼(霞ヶ浦)、小規模湖沼(印旛沼)、分流(江戸川)の6地点で胃内容物分析と安定同位体比(δ13C・δ15N)分析を、河口堰と霞ヶ浦でGPSによる行動追跡(春季・冬季)を実施した。胃内容物組成は地点間で顕著に異なり、魚類が優占する地点、甲殻類・昆虫類・植物の比率が高い地点など、場所による食性の多様性が見られた。体長とδ15Nに明瞭な相関はみられなかった一方、体長の増加に伴いδ15Nの分散が大きくなったことから、成長に伴って餌の栄養段階はあまり変化しないが、利用可能な餌の多様性が増加する事が示唆された。利用水域の指標となるδ13Cは、霞ヶ浦、利根川本流(中流〜最下流)および江戸川では、高塩分環境の利用を示唆する高い値(>-24‰)を示す個体が多数存在するとともに、その値の変異が大きく(−29.0〜−21.5‰)、塩分の異なる水域間の往来が示唆された。一方、印旛沼ではδ13Cの変異は小さく-24‰を超えなかった(−27.2〜−24.3‰)ことから、淡水の閉鎖的水域に留まる生活史を持つ個体群の存在も示唆された。GPS追跡では、河口堰下流で放流した個体が河口堰の水門を通過して霞ヶ浦へ侵入する最大21.0 kmの移動を実測した。1日の平均移動距離は春季には7.0 km、冬季には0.8 kmと季節差が見られた。以上より、①本種は生息する環境に応じて幅広い餌を利用すること、②長距離を移動し水域間を往来できる高い移動能力を有すること、③分散リスクが季節で変動し得ることが示唆された。