| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) N02-01 (Oral presentation)
長らく島嶼は、個体群サイズが小さく遺伝的多様性が低いという理由から、生物多様性の大陸 (他地域) への供給源としての役割は限定的であると考えられてきた。しかし近年では、島嶼から大陸への逆移住の可能性が指摘され、従来の見解は再検討されつつある。これは、一方向性だと仮定されてきた島嶼から大陸へ生物の移住や遺伝子流動がいつ、どのようにして成立するか?という重要な問いを提起する。そこで本研究では、海を超えた分散が生じやすいと想定される鳥種、シマクイナを対象に、島嶼由来の遺伝的変異が、集団の定着や遺伝子流動を通じて大陸集団にどのような影響を与えてきたか?を系統地理学によって検証した。東アジア大陸域(ロシア極東)および島嶼域(日本列島)の全分布域からDNAサンプルを収集した。そして、MIG-seeqで得られたゲノムワイドデータを用いた系統推定や集団動態推定、さらに種分布モデルを組み合わせることで、時空間明示的な移住および遺伝子流動の歴史を再構築した。その結果、本種は第四紀中期頃に大陸集団と島集団が分岐した後、島から大陸への非対称的な遺伝子流動が生じたことが支持された。分岐後、島集団は大きく安定した集団サイズを維持していた一方で、大陸集団は深刻なボトルネックを経験しており、島が大陸集団の進化史に重要な役割を果たした可能性が示唆された。さらに、近年において大陸集団由来の個体が日本へ再定着した証拠も得られ、進化的な時間スケールでの大陸・島間の双方向的なダイナミックなメタ個体群構造が示唆された。これらの結果は、ダイナミックな大陸・島メタ個体群のもとで島に遺伝的多様性が保持されることで、島が大陸集団に対する遺伝的・集団動態的リザーバーとして機能する可能性を示している。島集団が大陸の遺伝的多様性に寄与する進化的経路として、大陸・島メタ個体群が重要な機能を果たす可能性がある。