| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) N02-04 (Oral presentation)
イノシシ(Sus scrofa)は東南アジア諸島地域を起源とし、その後ユーラシア大陸を北上する過程で、東側集団と西側集団に分化したことが知られており、日本列島へは東側の祖先集団が進出したと考えられている。現在、日本列島にはニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax)とリュウキュウイノシシ(Sus scrofa riukiuanus)が生息しており、両者は生息域や形態に違いが見られる。両者の遺伝的関係については、これまでミトコンドリアDNAやマイクロサテライトを用いた研究は行われてきたが、日本列島のイノシシと他地域集団との遺伝的関係を評価するには不十分であった。本研究では、本州地域のニホンイノシシ3個体(栃木・愛知・京都)、四国地域1個体(徳島)、九州地域1個体(佐賀)に加え、リュウキュウイノシシ2個体(沖縄本島・石垣島)について全ゲノム塩基配列を取得し、集団遺伝学的解析を行うことで、集団間の遺伝的関係性を詳細に検討した。
最尤法による系統樹推定の結果、ニホンイノシシとリュウキュウイノシシはそれぞれ単系統を成し、これら2群は共通祖先をもつ1つの単系統群を形成した。また、主成分分析においても、両者はそれぞれ明瞭に異なるクラスターを形成した。これらの結果から、ニホンイノシシとリュウキュウイノシシは、日本列島内での地理的隔離後にそれぞれ独立して進化した系統である可能性が示唆された。さらにf4-statisticsから、ニホンイノシシの祖先集団と中国北部およびロシア東部のイノシシ祖先集団との間で、過去に遺伝的交雑が生じていた可能性が示唆された。