| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) N02-05  (Oral presentation)

イトヨの染色体融合に伴うテロメアとセントロメアの進化
Evolution of telomeres and centromeres associated with chromosome fusion in sticklebacks

*山﨑曜(国立遺伝学研究所), 豊田敦(国立遺伝学研究所), 門田満隆(理化学研究所), 工樂樹洋(国立遺伝学研究所), 北野潤(国立遺伝学研究所)
*Yo YAMASAKI(National Institute of Genetics), Atsushi TOYODA(National Institute of Genetics), Mitsutaka KADOTA(RIKEN BDR), Shigehiro KURAKU(National Institute of Genetics), Jun KITANO(National Institute of Genetics)

近縁種間での核型の違いは雑種不稔や組換え率の変化などを通じて種分化に貢献しうるため,その進化パターンとメカニズムの理解は重要である.近年のゲノム解析技術の発展により,染色体構造解析は塩基配列レベルの解像度で実施することが可能となってきた.小型の淡水魚であるニホンイトヨではY染色体が常染色体(LG9)と融合しており,これは姉妹種であるイトヨと分岐した70万年前以降とごく最近に進化したことが示唆されている.この染色体融合で形成されたネオ性染色体は同所域での生殖隔離や遺伝子流動低下に貢献することが先行研究によって明らかになっている.そこで本研究ではニホンイトヨの融合染色体の配列を詳細に解析することで,どのような分子機構で染色体は融合したのか,そして融合後にどのような進化が起きたのかを解明することを目的とした.染色体の融合部分を詳細に検討したところ,染色体融合はY染色体のテロメア領域,LG9のテロメア領域およびサブテロメア領域のみを失う形で融合していた.融合に伴う機能遺伝子の欠損は観察されなかったことから,融合の直接的な有害効果は低かった可能性が示唆された.融合染色体に存在する二つのセントロメア領域のうち,祖先Y染色体に由来する部分は繰り返し配列のモチーフ単位も数も縮小し活性化セントロメアに特徴的なDNAメチル化の低下も見られなかった.一方でLG9に由来するセントロメア領域ではリピート領域の長さは3倍以上に伸長しておりDNAメチル化の低下も見られた.今後は様々な生物で染色体融合を観察することで,染色体融合に見られる一般的な様式を明らかにする必要がある.


日本生態学会