| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) N02-07 (Oral presentation)
食性は生活史における様々な生態的特性と密接に関連するが、両生類は隠遁性が高く直接観察が難しいため、他の動物群と比較して研究例は少ない。八重山諸島にはオオハナサキガエルとコガタハナサキガエルのニオイガエル属2種が分布し、一部の個体群は常緑広葉樹林に囲まれた山地の河川上流域に同所的に生息している。同所的に生息する近縁種間の資源利用様式を明らかにすることは、種共存の仕組みを理解する上で重要である。しかし、コガタハナサキガエルでは食性が明らかになっている一方で、オオハナサキガエルの食性に関する知見は限られている。そこで本研究では、オオハナサキガエルの食性解明を目的として胃内容物分析を行った。石垣島および西表島の山地を流れる渓流を夜間に踏査し、捕獲したカエルから強制嘔吐法により胃内容物を採取し、エタノールで固定した。計99個体をサンプリングし、55個体から胃内容物を確認した。実体顕微鏡下で分析した結果、有機物および無機物が検出され、被食動物は7綱17目に分類された。それぞれの動物が捕食される頻度を比較するため、捕食していたカエルの個体数を被食動物の分類群別に集計した。その結果、昆虫綱を捕食していた個体の割合が最も高く、目レベルではゴキブリ目、バッタ目の順に高かった。チョウ目およびハエ目は幼虫、ハチ目はアリ科であり、飛翔性動物は確認されなかった。このことから、本種は沢沿いの林床に生息する地表性動物を主要な餌資源として利用していると考えられた。石垣島と西表島の個体群の胃内容物は高い類似性を示し、食性に明確な差は認められなかった。また、同所的に生息するコガタハナサキガエルとの比較では、利用する餌資源に重複がみられたが、明確な競合関係は確認されなかった。以上より、八重山諸島のニオイガエル属2種は、地表性動物を共通の餌資源としつつ、特定の分類群に依存しない幅広い食性を有することが示唆された。