| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) N02-11 (Oral presentation)
ヒゲブトハネカクシ亜科 (コウチュウ目:ハネカクシ科) は、17,000種以上を含む非常に多様性に富むグループである一方で、基礎生態が明らかになっている種はほとんどいない。南西諸島に分布するメダカヒゲブトハネカクシTetrasticta laetaは、腐肉トラップで得られた個体に基づき記載されたものの、野外でシロアリが営巣した倒木を暴くと飛来するという習性ももつことから、その食性は不明瞭である。また、本種はこれまでに成虫しか得られておらず、卵から蛹にかけての生態は知られていない。そこで本研究では、本種の基礎的な生態情報の蓄積を目的として、飼育系を確立した上で食性幅を検証するための給餌実験を行った。
飼育により明らかになった本種の卵・幼虫・蛹の期間はそれぞれ約2.5日・8.3日・13.5日であり、生存率は約76%、成虫の寿命は約89日であった。また、雌の生涯産卵数は約253個で、生涯を通じて1日の平均産卵数に大きな変化は見られなかった。本種の幼虫を対象にシロアリ、ゴキブリ、コオロギ、トビムシ、ダンゴムシ、および人工飼料を与えて飼育した給餌実験の結果、シロアリ、ゴキブリ、およびコオロギを与えた場合でのみ正常な発育が観察された。また本種の成虫を対象にシロアリ、ゴキブリ、コオロギ、およびダンゴムシを与えた給餌実験では、ダンゴムシ以外を与えた場合に平均的な産卵数が確認された一方で、ダンゴムシを与えた場合は実験期間の40日間を通して産卵は一切観察されなかった。以上の結果から、本種は、例えばシロアリを専食する好白蟻性種のようなスペシャリストではないものの、一定の食性幅もしくは好みを持つことが示唆された。本種は野外において、腐肉や倒木に集まる小型の生物を捕食していると考えられるが、本種の食性をさらに理解するためには、実地調査や各餌に対する選好性の検証が必要である。