| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) N02-12  (Oral presentation)

ミジンコ休眠卵生産におけるセラミド代謝関連遺伝子の機能解析
Functional analysis of ceramide metabolism-related genes in resting egg production of Daphnia

*丸岡奈津美, 宮川一志(宇都宮大学)
*Natsumi MARUOKA, Hitoshi MIYAKAWA(Utsunomiya Univ.)

休眠は幅広い分類群に見られ、不適環境を乗り越えるために不可欠な生活史戦略である。絶対単為生殖型ミジンコ(Daphnia pulex)は、好適環境下では単為生殖により急発卵を生産するが、餌不足や競争者の増加時には休眠卵を生産する。発表者はこれまでに、休眠が競争回避機構として機能し、複数個体群の同所的共存を支えることを示してきた (Maruoka et al. 2024)。ミジンコ休眠に関する生態的知見が蓄積する一方、卵生産を制御する分子機構はほとんど調べられていない。発表者はこれまでに、RNA-seq解析により休眠卵生産前に発現の高い遺伝子として、セラミド代謝関連遺伝子であるセラミダーゼ (CDase) およびアシルCoA合成酵素の1種であるbubblegum (bgm) の2遺伝子を同定している (Maruoka et al. 2023)。本研究では、これら候補遺伝子のミジンコ休眠卵生産における機能を解析した。前者のCDaseについては、阻害剤カルモフールを用いた暴露実験により、休眠卵生産が抑制されるか検証した。その結果、抑制がみられる場合とみられない場合があり、薬剤の加水分解による不安定性が影響した可能性が示唆された。後者のbgmは長鎖脂肪酸を代謝可能な形に活性化する酵素であり、本種では遺伝子重複により2つのbgmが存在していた。CRISPR/Cas9法を用い、bgmノックアウトミジンコの作出を試みた結果、重複する遺伝子の双方にホモで機能欠損が生じた個体が1個体も得られなかったことから、完全な機能欠損は致死であることが予想された。一方で、片方の遺伝子にヘテロで機能欠損が生じた個体は生存し、bgmの発現量が野生型に比べて有意に低下していた。そのため、このbgm低発現ミジンコに対して、含有脂肪酸組成の変化を分析するとともに、飼育実験により休眠卵生産頻度が変化しているかを解析した。本発表では、これら実験結果からセラミド代謝が休眠卵生産の制御に果たす役割について議論する。


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