| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-001  (Poster presentation)

間伐材木炭の施用による森林土壌養分と苗木成長への影響 ~伝統工芸原料の生産促進~【S】
Effects of Applying Charcoal from Thinned Cedar on Forest Soil Nutrients and Seedling Growth -Promoting Production of Traditional Craft Materials-【S】

*牧野奏佳香(福井県立大学), 石丸香苗(福井県立大学), 池田美穂(福井県立大学), 嶋田千香(福井大学)
*SOYOKA MAKINO(Fukui Prefectural Univ.), Kanae ISHIMARU(Fukui Prefectural Univ.), Miho IKEDA(Fukui Prefectural Univ.), Chika SHIMADA(Fukui Univ.)

近年、多くの人工林で経営不振等により間伐や主伐等の必要な施業が行われず、森林荒廃が問題となっている。そのため、木材の新たな利用用途の開拓や林業経営の向上が求められる。本研究では、間伐材を木炭にして土壌改良剤として利用し、文化的・経済的に価値の高い植物ノリウツギを林地で効率的に育成する方法を検討した。木炭には土壌の保水、保肥、pH調整、炭素の長期固定などの効果があると報告されている。また、ノリウツギは越前和紙や宇陀紙等の全国的にも有名な伝統工芸品の原料である。しかし近年、シカの食害や採取者の減少によって確保が難しい状況にあるため、林地での効率的な育成方法の検討は伝統産業の促進や林業者の副収入確保に繋がると期待される。本研究の試験地は、旧人工林と推定される福井県立大学あわらキャンパス演習林内の針葉樹林・針広混交林とした。まず、各林分のプロットにて深さ約15cmの土壌と木炭を乾燥重量比0、3、10、30%の4段階で混合し、各区画にノリウツギ苗を植栽した。その後、約2ヶ月毎に各区画の土壌pH、含水率、無機態窒素濃度等を調査し、ノリウツギ枝の長さや径の測定値から毎月の地上部バイオマスを推定し、葉の窒素濃度も併せて、木炭の施用効果を検討した。その結果、土壌pH、無機態窒素濃度は木炭施用量が増加するにつれて上昇し、含水率も30%施用区で他の区画よりも高い傾向がみられたが、3%、10%施用区では0%施用区より低い値を示す場合もあった。これは、本実験で用いた木炭サイズが粉末~約2cmと様々であったため、少量施用区ではサイズが土壌より大きい木炭の寄与が大きく、水分を保持できる表面積が減少して、むしろ水分保持量が減少した可能性が考えられた。また、ノリウツギの成長には光環境がより強く影響していたが、3%や10%の木炭施用も土壌からの窒素吸収等を通して正の影響を及ぼし、30%施用区では成長が抑制されたため過剰施用であったと考えられた。


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