| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-004  (Poster presentation)

都市居住者の自然利用:距離と利用頻度【S】
How far do city dwellers go for nature? A study of distance and frequency of use【S】

*小池文人(横浜国立大学)
*Fumito KOIKE(Yokohama National University)

都市居住者にとって自然環境が精神的健康や身体的健康に必要であることを示す研究は多い.ここでは都市居住者はどの程度移動して自然を利用しているか,日常で接する自然と非日常的な自然利用との2つのモードがあるのか,を考える.社会生活基本調査での登山・ハイキングの行動者率と地理情報の関係を解析するとともに,横浜市と川崎市の居住者に対してアンケートを行った.
その結果,登山・ハイキングは高い山岳が近くに存在する高人口密度の地域で行動者率が高く,都道府県ごとの違いの57%を説明できた.自然の利用方法のアンケート(重複回答)では自然に接する散歩が最も多く,1年間で約60%の回答者が利用していた.野外アクティビティである登山やハイキング,自然の中のバーベキューやキャンプ,海水浴などでは10~20%の回答者が利用していて,自然の写真撮影やスケッチ,楽しみながら行う自然管理作業や農地耕作,などは利用率が5~10%の範囲にあり,昆虫採集,バードウォッチング,山菜採りや野花つみ,など種同定をともない専門性のある利用は2.5~5%の範囲にあった.水域については魚釣りが7.2%,潮干刈やカニ取りが3.6%であった.距離と利用頻度の関係は,自宅徒歩圏内,神奈川県内,100km程度,500km程度,1000km以上と離れるに従って連続的かつ指数関数的に利用頻度が減少し,日常性と非日常性の区分はできなかった.
このように利用頻度の距離依存性が高く,また日常性と非日常性の明瞭な区分は見られないため,居住地の近くに良好な自然が存在すれば利用率が上昇し居住者の福利に貢献すると考えられる.なお1年間に自然を利用した回答者が大部分だったが利用していない回答は24%あり自然の必要性の強さに頻度分布が存在する可能性がある.


日本生態学会