| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-005  (Poster presentation)

諏訪湖の環境問題および生物多様性戦略に関する市民の意識と社会参加に関する研究【A】
Study on citizens' awareness and social participation regarding environmental issues in Lake Suwa and biodiversity strategies【A】

*王芸睿, 大窪久美子(信州大学農学部)
*Geiei OU, Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

諏訪湖では化学的な水質指標は改善傾向にあるが、ヒシの繁茂など新たな生態学的課題が顕在化している。行政は「生物多様性戦略」を策定しているが、市民への認識には課題があり、具体的な保全行動への参画には至っていないと考えられる。本研究ではアンケート調査により、市民の環境問題に対する意識、生物多様性戦略への認知、保全行動の実態を定量的に把握し、意識から行動に至る心理的プロセスを構造的に明らかにすることを目的とした
諏訪湖の緑地と信州大学での対面およびWebでの調査が、2024年11月から約1年間実施された。有効回答数は計500件で、内訳は一般市民255名(50.1%)、農学部生221名(44.2%)、他学部生28名(5.6%)である。
解析の結果、「生物多様性」という言葉の認知度は全体的に高く、特に農学部生では97.3%だった。しかし具体的な政策である国や県の生物多様性国家戦略への認知度は各々32%、17%と低かった。特に農学部生の高い認知度に対し、実際に活動へ参加している経験者は1%未満という極端な「知識と行動の乖離」が示唆された。一方、政策認知は参加意向と正の相関を示し、特に身近な「県戦略」への理解は、「国戦略」以上に強い行動意欲と関係することが考えられた。また、過去の参加経験がある層は、未経験層に比べ将来の参加意向が有意に高かった。
以上、多くの人々が環境保全の重要性を理解しながらも、地域政策への認知度は低く、具体的な行動に至っていないことが示された。また、諏訪湖における生物多様性に関する科学的知見や地域での具体的な環境保全活動の情報提供が行動変容を促すと考えられた。今後、諏訪湖の生物多様性保全においては、行政情報の可視化により政策の「自分事化」を促すとともに、シチズンサイエンス等の参加障壁の低いプログラムを導入し、知識を行動へと転換させる具体的な仕組み作りが求められる。


日本生態学会