| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-014  (Poster presentation)

人新世における岩礁潮間帯生物群集の時間傾向と気候変動:4機能群の長期動態
Temporal trend of community and climate changes in the Anthropocene: long term dynamics of four major functional groups on rocky intertidal habitat

*佐藤洸紀(北海道大学)
*Hiroki SATO(Hokkaido Univ.)

気候変動が海洋生態系に及ぼす影響を明らかにするうえで有効なアプローチのひとつは,各種のアバンダンスの正確な定量と種特性の推定が可能なモデル群集を対象に,数十年スケールでの気候変動が主要な機能群の地域スケールのアバンダンスに及ぼす影響を,機能群レベルと個体群レベルで評価することである.そこで本研究では北海道東部太平洋沿岸の岩礁潮間帯生物群集の21年間の変化を明らかにするため,最初に主要機能群(底生藻類,固着動物,植食性動物,肉食性動物)を対象に機能群アバンダンスの時間傾向とその動態の駆動機構を評価した.また期間中に調査地の一つで築港が行われたため、それによるバイアスが存在するのかを評価した。その結果,底生藻類,植食性動物,肉食性動物において気候変動の直接的または間接的な影響によって引き起こされたと判断される有意な時間傾向が確認された.次に,種ごとの個体群アバンダンスの時間傾向とその動態の駆動機構を評価した.その結果,全39種のうち18種で増加傾向が,6種で減少傾向が認められ,温暖化よりも酸性化の影響を受けた種の方が多かった.この個体群アバンダンスの時間傾向とその動態の駆動機構の種間の違いはある程度種の特性に関連しており,時間傾向では温度ニッチが高い種では増加し,温度ニッチが低い種や石灰化のみられる種では減少する傾向があった.個体群動態の駆動機構では,酸性化と思しき影響は石灰化の見られる種でより顕著であった.また築港があった調査地を除いたデータでの結果と含めたデータでの結果を比較すると,有意な差が確認できなかったことから,数十年スケールでの気候変動が主要な機能群の地域スケールのアバンダンスに及ぼす影響に対して,今回の築港が与えたバイアスは無視できる程度のものであったと言える.


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