| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-015  (Poster presentation)

ドローン超低空写真を活用した湿原植生パターンの認識【A】
Mapping mire vegetation patterns using ultra-low-altitude drone photography【A】

*金子和広(北海道大学), 冨士田裕子(北海道大学), 加藤ゆき恵(釧路市立博物館)
*Kazuhiro KANEKO(Hokkaido Univ.), Hiroko FUJITA(Hokkaido Univ.), Yukie KATO(Kushiro City Mus.)

 植物群落の分布パターンを表現した植生図は、生物多様性の把握、立地環境との対応分析、経時変化の検討など様々な場面で活用される。湿原では、狭い空間内に多様な群落が共存すること、足場が悪く実測点を得るための踏査が困難なことから、再現性の高い植生図の作成手法は確立されていない。本研究では、季節や高度を変えてドローン空撮を実施し、高解像度の光学・地表高データと、踏査を代替しうる超低空からの写真を用いて植生分布モデルを作成することで、群落の識別に有効なデータを特定することを目的とした。
 調査地は北海道東部西別川下流の兼金沼湿原で、全域3.0 km2のうち0.73 km2を対象とした。ここではミカヅキグサ群落・ヌマガヤ群落・ヤチスゲ-ホタルイ群落・イソツツジ-チャミズゴケ群落の4群落が記載されている(冨士田ほか 2025)。
 2025年の春期と夏期に地上80 mからMavic 3M(DJI社製)で空撮し、解像度5 cm以下のRGB画像・マルチスペクトル(MS)画像・地表高モデルを取得した。これらより、各データの使用/不使用の組合せを変えたデータセットを計126通り作成した。夏期に一部の範囲で地上3 mからも空撮し、種判別が可能な約1400枚の写真をもとに4群落の分布地点をGIS上で特定した。応答変数を群落タイプ、説明変数を上記の各データセットとした機械学習モデルを作成して予測精度を比較した。また、分散分析で各要素の予測精度に対する寄与を評価した。
 予測精度が最も高かったのは全てのデータを含むモデルで、全体予測精度は93%、各群落では76-97%だった。各データはいずれも有意に全体予測精度の向上に寄与した。最も判読地点数の少ないイソツツジ-チャミズゴケ群落では、春期のMS・地表高データが予測精度を著しく向上させた。以上の結果から、超低空写真は湿原植物群落の実測点を効率的かつ信頼性をもって取得する手段として有用なこと、群落の識別には複数の季節の光学・地表高データが必要なことがわかった。


日本生態学会