| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-016  (Poster presentation)

モンゴル全域における極端気候に対する植物群集の感受性【A】
Plant community sensitivity to climate extremes across Mongolia【A】

*秋山拓臣(横浜国立大学), 衣笠利彦(鳥取大学), Gantsetseg BATDELGER(IRIMHE), Erdenetsetseg BAASANDAI(IRIMHE), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Takumi AKIYAMA(Yokohama National Univ.), Toshihiko KINUGASA(Tottori Univ.), Gantsetseg BATDELGER(IRIMHE), Erdenetsetseg BAASANDAI(IRIMHE), Takehiro SASAKI(Yokohama National Univ.)

乾燥地は地球の陸地面積の約45%を占め、20億人以上が住む重要な地域であるが、干ばつや高温といった極端現象が激化している。それらの同時発生は、個々の現象よりも大きな負の影響を生産性や炭素循環にもたらしている。個々の事象ベースの比較は検証され始めているが、統計的な交互作用の検出は不十分である。また、植物生産性への影響が地域の乾燥度条件にどう依存するかは未解明であるため、本研究はそれらを検証することを目的とした。
植生データはモンゴル全土の687サイトにて統一した方法で収集された広範な乾燥度勾配を網羅する8年間の草原観測データを用い、気候データは公開データソースより入手した。解析は線形混合効果モデルを用いた。
解析の結果、乾燥度の高い環境では極端な高温に対する生産性の反応は弱く、干ばつの深刻度にもほとんど影響されなかった。一方、乾燥度が低い草原では、極端高温は生産性を低下させ、その影響は極端干ばつが深刻であるほど増大した。こうした乾燥度依存性の相互作用は年間降水量や年平均気温とは独立して現れたため、極端気候現象が平均的な気候条件とは異なる制約を課すことを示唆する。
加えて、干ばつ耐性と高温耐性のあるC4植物種の被覆割合は乾燥度が高いほど増加した。ゆえに高乾燥度の条件下では植物群集の干ばつと高温への耐性が高いため、干ばつの追加変動は限定的な影響しか及ぼさず、それらの相互作用を抑制したと考えられる。一方で、低乾燥度の条件下では水ストレスと熱ストレスの耐性が低い植物群集であるため、極端な干ばつの発生時は熱ストレスが増幅され生産性が急激に低下したと言える。
本研究は、複合的な極端現象の発生が平均的気候とは異なる影響を生産性に及ぼすことを実証するとともに、極端現象に対する生態系の脆弱性は、極端現象の交互作用やそれぞれの地域の気候と植物群集の特性を複合的に考慮して評価する必要があることを強調する。


日本生態学会