| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-018 (Poster presentation)
人間の存在は野生動物に対して恐怖を与えることが知られている。野生動物の主要な生息地である森林に、管理のために設置される林道は、人間活動が生じる場所として動物の行動に影響を与えている可能性がある。特に樹上性哺乳類にとって林道は捕食リスクが高い開放環境であることに加え、人間という脅威が存在するため、リスクが高い空間として認識していることが予想される。本研究では、樹上性哺乳類であるニホンリスが林道を横断する時間帯を調べ、人間活動を回避しているか検討した。
2022年6~11月と2025年8~11月にカメラトラップ調査を実施した。車両の通行頻度が異なる林道および林内にカメラを設置し、ニホンリス、車両、人間の撮影時刻データを取得した。ニホンリスの日周活動パターンを推定するため、林道サイトを車両通行の有無で区分した車両あり林道サイトと車両なし林道サイトに林内サイトを含めた3つのサイトタイプでカーネル密度推定を行った。また、無作為化検定を行い、サイトタイプ間で活動パターンに違いがあるか評価した。さらに、ニホンリスの出現時刻に影響を与えている要因を解析するため、撮影時刻と日の出時刻との差を車両の通行頻度、人間の撮影頻度、開空度、見通し度で説明する一般化線形混合モデル(GLMM)を構築した。
合計136サイトのカメラトラップにより、ニホンリスは521回撮影された。カーネル密度推定の結果、ニホンリスは車両あり林道サイトと林内サイトで活動パターンが有意に異なった。車両あり林道サイトでは、より早朝に出現のピークを迎え、さらに日中の出現が減少した。GLMMの結果、車両の通行頻度で有意な負の影響が検出され、車両の増加がニホンリスの出現時刻を早めていることが示された。本研究より、ニホンリスは人間活動が多い林道を避け、日の出近くの時間帯に林道を横断することで、人間のリスクを回避していることが示唆された。