| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-019 (Poster presentation)
チョウ類群集を用いた環境評価の手法はある程度確立しているが、同目の蛾類については、種数が多く同定が困難で、環境指標に関する研究はいまだ少ない。蛾類には草原環境をハビタットとする種も多く、国レッドリスト掲載の約6割が湿地を含めた草原性種である(環境省, 2020)。一方、近年特に半自然草原の生物多様性低下が課題となっており、本研究では蛾類群集を用いた新たな環境および生物多様性評価の手法を開発するための基礎的知見を得ることを目的とした。
調査地域は半自然草原が卓越する本州中部の霧ヶ峰と九州北部のくじゅう地区である。蛾類群集調査は霧ヶ峰の3地点、くじゅう地区の5地点でカーテン式ライトトラップを用いて実施された。霧ヶ峰は2019~2020年、くじゅう地区は2023~2025年の夏季における大蛾類の在不在データを用いた。土地利用調査は各地点を中心とした半径200 m円内の土地利用割合を算出した。
出現種数は霧ヶ峰が368、くじゅう地区は525、合計727で、国レッドリスト掲載種は15(草原・湿地性種:12)だった。群集の餌資源別割合は周辺土地利用を反映し、霧ヶ峰の調査区を主とする高標高草原では草本食種の割合が特に高かった。Sørensen指数による類似性解析では、群集の非類似度と調査区間距離の間に有意な正の相関(Spearmanの順位相関係数ρ p<0.001)、また地域間で非類似度に有意差がみられた(Wilcoxon順位和検定 p < 0.001)。上記と同様にクラスター分析の結果でも蛾類群集は植生および立地環境、植生管理手法に強く反映を受けることが示唆された。さらに、指標種分析(IndVal.g)により、各地域に特徴的な草原性指標種候補が抽出された。なお、本研究はJSPS科研費JP 19K06107およびJP22K05706、JP 25K09175の助成を受けた。