| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-025 (Poster presentation)
花の形質は送粉者の種類や行動を制限する。マメ科トビカズラ属Mucunaの植物は、「裂開」を経て送粉される。裂開とは、訪花動物が翼弁を押し下げることで、竜骨弁に隠れた雌蕊と雄蕊が露出するという一連のプロセスであり、これを担う動物を「裂開者」と呼ぶ。例えば、同属のイルカンダM. macrocarpaでは裂開に一定以上の力を要するため昆虫では裂開できず、リスやオオコウモリ、サルなどの哺乳類が裂開・送粉を担う。本研究の対象であるワニグチモダマM. giganteaは海岸林に生育し、汎熱帯域に広く分布する。先行研究において、西表島のワニグチモダマでは、ヤエヤマオオコウモリPteropus dasymallus yayeyamaeが花を裂開し、裂開された2花序のうち1花序で結実が確認された。一方、西表島と同様にワニグチモダマの分布北限域である沖縄島においても、花の裂開は確認されるが、結実は非常に稀である。そこで、沖縄島のワニグチモダマの訪花動物と結果率(果実が形成された花序の割合)を調査し、西表島と比較した。自動撮影カメラと夜間の直接観察により、鳥類3種、オリイオオコウモリP. d. inopinatus、クマネズミRattus rattus(外来種)の訪花が確認された。このうち、クマネズミが10花序で裂開を行ったが、結実は確認されなかった。また、クマネズミおよびオリイオオコウモリでは、裂開せずに盗蜜する行動や花を損傷する行動が観察された。沖縄島で結実が稀な要因として、開花期(冬季)の低温による花粉管の発芽抑制を想定し、温度条件を変えて発芽実験を行った。その結果、発芽率は10℃で最も高く、30℃では有意に低かった。以上より、少なくとも低温は地域間の結果率の差の主因ではなく、裂開者の種類、あるいは裂開様式(裂開姿勢・損傷の程度など)の差が関与している可能性が示唆された。