| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-028 (Poster presentation)
雌雄はゲノムの大部分を共有しており、遺伝相関が存在する場合、一方の性に働く選択が他方の性にも相関進化をもたらすことは、形態関連形質などで広く知られている。では、このような相関進化は、性的二形を示し、かつ多因子遺伝性をもつ繁殖行動形質にも見られるのだろうか。繁殖期の雄に見られる攻撃的な縄張り行動は、雄の適応度に直結する形質である。一方で、雌にも縄張り性を示す動物種は存在するものの、その発現は雄より弱い場合が多い。さらに、雄の縄張り性は集団間で発現レベルが顕著に異なることが多くの分類群で知られている。それでは、このような雄の繁殖形質の集団間分化は、雌にも同様の相関集団分化をもたらすのだろうか。加えて、もし相関進化(相関集団分化)が存在するとすれば、その遺伝的背景はいかなるものだろうか。これらの問いを追究するため、進化生物学・動物行動学のモデル野生動物であるイトヨを対象とし、雌雄の縄張り性が相関集団分化している2集団を選定した。そして、詳細な行動解析、脳RNA-seq解析、さらに両集団のF1交雑個体を用いた脳のアリル特異的発現(ASE)解析を実施した。その結果、神経系およびホルモン応答に関連する遺伝子オントロジー(GO)タームに含まれる遺伝子群において、雌雄で類似した発現差パターンが認められた。さらに、これらの中でシス変異を示す遺伝子群についても、雌雄間で類似した傾向が見られた。以上より、縄張り性の集団差に関わる神経・内分泌の遺伝基盤が、雌雄で共通して作用している可能性が強く示唆される。本発表では、以上の結果を踏まえ、本系における繁殖形質の相関進化を駆動する究極要因についても議論する。