| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-030 (Poster presentation)
ヤドカリ類にとって巻貝類の殻は,捕食者からの防御,成長率,抱卵数など,生存や繁殖に直接関わる重要な資源である。そのため,ヤドカリ類は貝殻の質を選択していることが知られている。貝殻サイズの適合度も重要な要素であり,適切なフィッティングの貝殻を得られるかどうかは,成長や捕食リスクなど,個体の適応度に直結することが知られている。中津干潟を対象としたこれまでの研究から,ヤドカリの貝殻サイズ適合度が干潟内の地点ごとに異なっていることが明らかとなった。しかし,貝殻のフィッティングは利用可能な貝殻資源量に影響されることから,ヤドカリ密度の影響も受けることが予想される。そこで本研究では,中津干潟のナガツノヤドカリDiogenes nitidimanusおよびユビナガホンヤドカリPagurus minutusを対象とし,同種および他種ヤドカリの密度を操作した貝殻選択実験により,貝殻サイズの適合度に対するヤドカリ密度の影響を評価した。本研究の結果,同種のヤドカリ密度を操作した実験ではテナガツノヤドカリでは密度上昇に伴いフィッティングが低下した一方,ユビナガホンヤドカリでは密度とフィッティングに関連はみられなかった。2種の比を変えることで他種の密度を操作した実験では,ユビナガホンヤドカリでテナガツノヤドカリよりもフィッティングが上昇する傾向があったものの他種密度によるフィッティングの違いは確認されなかった。このことから,本研究では,ヤドカリ個体数の密度による貝殻適合度には種差が存在すること,2種が同時に水槽で貝殻選択を行う場合,ユビナガホンヤドカリのほうが高い貝殻サイズ適合度の貝殻を得やすいこと,種比よりも2種合計の個体数がヤドカリ密度として影響している可能性が示唆された。