| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-031 (Poster presentation)
新たな地域へ侵入した生物が種間相互作用から解放されて生じるニッチの拡大は生態的解放とよばれ、形態変化を伴うことも多い。先行研究は外来種に関するものが多い一方で、在来種に関して複数地点で同様の現象を比較した研究例は少ない。ニホンアマガエル (以下、アマガエル)は西日本に分布する在来種であり、長崎県対馬などの一部の島嶼で大型化している。これらの島嶼はカエル相が乏しく、本種の祖先系統である朝鮮半島の個体群は体サイズが小さいことから、朝鮮半島から日本へ分布拡大が生じた後、競争種が少ない島嶼で生態的解放により大型化した可能性が考えられる。本研究では、一部の島嶼におけるアマガエルの大型化が生態的解放によって生じたか、及び大型化が遺伝的なものかを検証した。
まず、競争種が少ないことで大型化しているなら、競争種の在・不在がアマガエルの体サイズに影響を与えているはずである。そのため、アマガエルの体サイズの地理的パターンと他種のカエルの在・不在を調査した。その結果、アマガエルよりやや大型なシュレーゲルアオガエル(以下、シュレ)のみが体サイズに影響しており、シュレが生息しない地点では、アマガエルの体サイズはより大きかった。次に、アマガエルの体サイズの地理変異が遺伝的かを検証するためにコモンガーデン実験を行った。その結果、シュレが生息しない地点のほうが、幼生の成長率が高かった。最後に、生態的解放によってアマガエルが利用する餌ニッチが拡大し、摂食している餌サイズが大きくなっているのかを検証するため、胃内容物の餌サイズを調査した。その結果、シュレが生息しない地点のアマガエルはニッチが拡大し、より大きな餌を食べていることが分かった。これらのことから、アマガエルは一部の島嶼において、シュレが生息しないことによって生態的解放が生じ、大型な体サイズに進化したことが示唆された。